特許法でいうマーカッシュクレームとは、一つの請求項の中に多数の変数が存在し、そしてその変数が多数の選択肢を有する、化学・医薬分野でよく使われる特殊的なクレームです。化合物がマーカッシュクレームによってクレームされている場合、一旦権利化されると、その権利範囲は作用・効果に係わり無く、これに包含されるすべての化合物にまで及び、特許権者の利益を最大化できます。このようなクレームの形式は広く活用されてきており、化学分野の出願の全体の30%以上に達していると言われています。
中国では特許審査基準においては、マーカッシュクレームの単一性( 専利審査指南2010第二部分第10章第8.1マーカッシュクレームの単一性)について規定があるが、それ以外については何も言及されていません。実務の中でマーカッシュクレームの属性(即ち、権利範囲の解釈)や無効審判における訂正方式、つまりマーカッシュクレームにおける変数の一部の選択肢を削除する訂正ができるか否やかについて、従来から実務的にも理論的にも議論されてきました(例えば、特許94115915.9の無効審決取消訴訟、特許97197460.8の無効審決取消訴訟)。
このような中で2017年12月、中国の最高人民法院により十例の創新知的財産事例2017に収録された「(2016)最高法行再第41号」の再審事件で、最高人民法院は3年に渡って慎重に審理を重ねてきた、マーカッシュクレームの訂正基準を明確にする判決を下しました。理論上の争いは依然として続いていくかもしれませんが、この判決は、従来各裁判所の判断基準が統一されていない問題を解決し、今後の類似の事件に対して指導的な意味を有することは間違いないと考えられます。
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