ニュースレター

法務:「改正外為法の政省令案・告示案の公表」

Newsletter (2020年3月) │ 法務

「改正外為法の政省令案・告示案の公表」についての法務ニュースレターをお送りします。改正外為法(外国為替及び外国貿易法)(2019年11月22日成立、同29日公布。令和元年法律第60号。公布日から6ヶ月以内に施行。以下「改正法」)は、外国投資家による日本企業の株式の取得について、従来に比して、より広範な事前届出の義務を課すものですが、その内容の詳細は、政省令や告示に委ねられており、明らかにされていませんでした。このニュースレターでは、2020年3月13日付政省令案・告示案について、Q&Aの形式でお届けいたします。

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法務:「2019年薬機法(医薬品医療機器等法)等改正案と企業に与える影響」3月11日更新版

Newsletter (2020年3月) │ 法務

I. はじめに

2019年3月19日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出されました[1]。第198回通常国会での成立はならず、同年10月4日に開会した臨時国会において審議が継続して行われ、11月27日の参院本会議で可決され、成立、12月4日に公布されました(以下「改正薬機法」)。衆議院厚生労働委員会では14項目、参議院厚生労働委員会では11項目の附帯決議が採択されました。

今回の改正薬機法は、5年前に施行された改正薬事法の附則において、施行後5年を目処として改正後の規程等を検討することとされていたことを受けたもので、広い範囲での改正内容となっています。薬機法に関連する企業への規制強化の側面を含んでいるため、今後詳細が定められる省令等の動向を含め注視していきたいトピックです。

なお、改正薬機法の内容は、2018年4月より行われた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会[2]における議論、薬事・食品衛生審議会血液事業部会[3]及び薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会[4]における議論と、同年12月25日に取りまとめられた「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」及び「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について」[5]を踏まえたものとなっています。

改正薬機法が公布されると、公布日から1年以内(但し、変更計画(PACMP)による製造方法等の変更手続きの導入、添付文書の電子的方法による提供、特定の機能を有する薬局の認定、ガバナンスに関する改正内容及び課徴金制度については2年以内、バーコード等の表示については3年以内)に施行されます。

(2020年3月11日追記)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和2年3月11日政令第39号)」(2020年3月11日公布)により、施行期日は、それぞれ、2020年9月1日(覚せい剤原料に関する改正は2020年4月1日)、2021年8月1日、2022年12月1日とされました。

本レターでは、当該改正薬機法の内容と、当該改正が企業に与える影響について紹介します。

II. 改正薬機法の内容

改正薬機法の内容は、1. 医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善、2. 住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し、3. 信頼確保のための法令遵守体制等の整備、4. その他、の4つの大項目から成ります。

 

1.医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善

「医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善」の内容として、(1)「先駆け審査指定制度」の法制化、(2)「条件付早期承認制度」の法制化、(3)変更計画(PACMP)による製造方法等の変更手続きの導入、(4)改良が見込まれている医療機器の継続した改良を可能とする承認審査制度の導入、(5)添付文書の電子的な方法による提供の原則化、(6)医薬品等の包装等へのバーコード等の表示の義務付け、(7)国際整合化に向けたGMP/GCTP調査に見直し、(8)安全供給の確保に向けたQMS調査の見直し等が盛り込まれています。

先駆け指定審査医薬品等は現行法においても運用で優先審査等の対象として扱われていますが、今回の改正では、「先駆的医薬品等」と「特定用途医薬品等」について、法律上の要件を定め、優先審査等の対象となる旨が法律上明確化されます。また、「条件付早期承認制度」についても現行法においても運用が開始されているところ、検証的臨床研究のデータを添付せずに承認申請を行うことができる旨を法律上明確に定めることとなります。また、変更計画(PACMP)による製造方法等の変更手続きの導入により変更手続きの短縮化が見込まれます。

製薬メーカー、医療機器メーカー、再生医療等製品メーカーにおいては、上記の制度を戦略的に利用して開発、承認申請、市販後の変更手続き等を促進していくことが望まれます。

また、(5)添付文書の電子的な方法による提供及び(6)医薬品等の包装等へのバーコード等の表示については、施行までにこれらの項目に対応したオペレーションを構築することが求められます。

 

2.住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し

「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し」の内容としては、(1)薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務及び患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務の法制化、(2)地域連携薬局、専門医療機関連携薬局の認定制度の導入、(3)テレビ電話等による服薬指導の規定、等が盛り込まれています。

薬局事業を営む企業は、(1)の改正により、薬局開設者に、薬剤師の情報提供への配慮義務や薬剤師に対して購入者等の使用状況の把握、購入者等への情報提供・指導及び情報提供・指導内容の記録をさせる等の義務が課せられる点に注意が必要です。また、今後詳細が固められていくこととなる、(2)や(3)といった新たな制度の活用可能性を検討することも考えられます。

(3)のテレビ電話等による服薬指導については、既に特区において国家戦略特別区域法第 20 条の5に規定する国家戦略特別区域処方箋薬剤遠隔指導事業が行われてきました。今回の改正では、そのような薬剤遠隔指導の要件を明確化し特区以外の地域にこれを拡大していくことが見込まれています。薬局がテレビ電話等による遠隔での服薬指導を行う場合には明確化される要件を注視し対応していくことが必要です。

(2020年3月11日追記)なお、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則等の一部を改正する省令案(仮称)の概要」[6]及び「オンライン服薬指導に関する施行通知(仮称)の要旨」[7]が2019年12月19日付で公表され意見募集(パブリックコメント)の手続きに付され、2020年春頃に公布される予定となっています。

 

3.信頼確保のための法令遵守体制等の整備

「信頼確保のための法令遵守体制等の整備」の内容として、(1)薬機法の許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け、(2)虚偽・誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度の創設、(3)国内未承認の医薬品等の輸入に係る確認制度の法制化、麻薬取締官等による捜査対象化、(4)医薬品として用いる覚せい剤原料について、医薬品として用いる麻薬と同様、自己の治療目的の携行輸入等の許可制度を導入、等が盛り込まれています。ここでは、企業に与える影響の大きい(1)と(2)の改正内容について取り上げます。

 

(1)薬機法の許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の製造販売業者、製造業者、薬局、店舗販売業者、配置販売業者、卸売販売業者、採血事業者、高度管理医療機器等の販売業者・貸与業者、修理業者のガバナンスに関係する改正内容であり、企業にとってインパクトのある改正内容となっています。

ア 責任役員

薬事に関する業務に責任を有する役員を法律上位置づけ、許可申請書に記載することが求められます。「薬事に関する業務に責任を有する役員」とは、株式会社においては、取締役を意味し、執行役員は含まれないとされています。なお、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では当局による責任役員の変更命令権が議論されていましたが、業界による反対もあり、今回の改正薬機法の内容に含めることは見送られています。もっとも2019年11月13日に衆院厚生労働委員会により採択された附帯決議及び11月26日に参院厚生労働委員会により採択された附帯決議には、「役員変更命令の法定化について、本法の施行状況を踏まえ検討を行う」という項目が含まれたため、将来的に役員変更命令の法制化が再度議論される余地が残りました。

イ 法令遵守体制の整備

改正薬機法では、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造販売業者・製造業者に対し、「…業務を適正に遂行することにより、薬事に関する法令の規定の遵守を確保するために」以下の措置を講じる義務、及び措置の内容を記録しこれを適切に保存する義務が追加されます。

  • 品質管理及び製造販売後安全管理に関する業務(製造業者においては製造の管理に関する業務)について、医薬品等総括製造販売責任者(製造業者においては医薬品製造管理者又は医薬部外品等責任技術者)が有する権限を明らかにすること
  • 品質管理及び製造販売後安全管理に関する業務(製造業者においては製造の管理に関する業務)その他の製造販売業者(製造業者)の業務の遂行が法令に適合することを確保するための体制、当該製造販売業者(製造業者)の薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業員の業務の監督に係る体制その他の製造販売業者(製造業者)の業務の適正を確保するために必要なものとして厚生労働省令で定める体制を整備すること
  • 医薬品等総括製造販売責任者(製造業者においては医薬品製造管理者、医薬部外品等責任技術者)その他の厚生労働省令で定める者に、第12条の2第1項各号(製造業者においては第14条2項4号)の厚生労働省令で定める基準を遵守して医薬品等の品質管理及び製造販売後安全管理(製造業者においては製造管理又は品質管理)を行わせるために必要な権限の付与及びそれらの者が行う業務の監督その他の措置
  • その他従業員に対して法令遵守のための指針を示すことその他の業務の適正な遂行に必要なものとして厚生労働省令で定める措置

また、これまでの総括製造販売責任者・製造管理者の意見の尊重義務に加え、これらの者として必要な能力及び経験を有する者をおかなければならないとの規定が追加されるとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは、当該措置を講じ、かつ、講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを適切に保存する義務が設けられます。これまでに記録・保存の社内プロセスの整備されていない企業は対応が必要になる事項です。

 

<法令遵守体制の整備の全体像>

医療機器・再生医療等製品の製造販売業者・製造業者や薬局、店舗販売業者、配置販売業者、卸売販売業者、採血事業者、高度管理医療機器等の販売業者・貸与業者、修理業者についても、改正薬機法において、同様に法令遵守体制の整備に関する規定がおかれています。

企業においては、自社の薬機法遵守の観点からの法令遵守体制の見直しが求められるでしょう。具体的な内容については今後厚生労働省令、施行規則、通知等で定められることになるため注視していくことが必要ですが、基本的には会社法上の内部統制(と金融商品取引法に基づく内部統制(財務報告に係る内部統制))の考え方を参考に、①ルールを決める、②決めたルールを伝達・教育する、③ルールに従って仕事を行い、それを記録化する、④記録を他者が監督する、というステップで薬機法遵守の体制を整備していくことが求められていくのではないかと考えられます。具体的には、企業行動規範の策定(見直し)や公表、薬事に関する法令遵守の重要性についてのトップによるメッセージ、組織図・社内規程・手順書・記録の保存のルール・内部通報制度等の見直し、適切な社内トレーニング等を行っていくことを検討することが考えられます。また、ヘルスケア事業を行う企業の買収等を行う際には、デューデリジェンスの中で、これまで以上に薬事に関する法令の遵守体制についても検討が必要になると思われます。

 

(2)虚偽・誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度の創設

薬機法改正薬機法における課徴金制度は、一連の研究不正の事件を受けて今回新たに導入されるもので、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品(併せて「医薬品等」)の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大広告を行った期間に取引をした対象医薬品等の対価の合計額に4.5%をかけた金額が課徴金額となることが定められています。なお、景品表示法の課徴金の計算に使われる%が3%であるのに対し、薬機法の課徴金が4.5%であるのは、ヘルスケア企業の営業利益率を勘案してのものとされています[8]

[8] 第200回国会 厚生労働委員会 第5号(令和元年11月13日(水曜日))議事録

この課徴金制度には景品表示法による優良誤認表示に該当する場合や許可・登録等の取消し、改善措置命令等を受ける場合の調整規定が定められており、独占禁止法や金融商品取引法等が課徴金の義務的賦課制度を採用しているのと異なり、課徴金納付命令を行わないことができる場合が定められていることが特徴的です。また自主申告の場合の減免制度も設けられています。なお、虚偽・誇大広告をやめてから5年を経過している行為や対価合計額が5000万円未満の場合については課徴金を課されないこととされています。

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインの施行等、ヘルスケア業界における広告規制や当局の監視は年々厳しくなっているといえます。企業としては、広告の監視体制を益々強化していくことが求められます。

4.その他

「その他」の改正内容として、(1)医薬品等の安全性の確保や危害の発生防止等に関する施策の実施状況を評価・監視する医薬品等行政評価・監視委員会の設置、(2)科学技術の発展等を踏まえた採血の制限の緩和、等が盛り込まれています。

(1)については、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会により2010年4月28日にとりまとめられた「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」[9]を踏まえて設置されるものです。

(2)については、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律[10](「血液法」)を改正することによって、「医薬品等の研究開発において試験に用いる物その他の医療の質又は保険衛生の向上に資する物」について、採血制限を緩和する等、医療の発展に寄与する採血を認める内容です。現状、例えば、医薬品等の開発において、候補物質の有効性、毒性などの評価に用いられるiPS心筋細胞等の血液由来特定研究用具、医学的検査の標準品が「医薬品等の研究開発において試験に用いる物その他の医療の質又は保険衛生の向上に資する物」として挙げられていますが、企業の研究開発に資する内容と考えられ、具体的な「物」の特定を引き続き注視していきたいところです。また、血液法の改正により、血液製剤の原料たる原料血漿を製造した製造業者、血液製剤を製造した製造業者は、新たに血液製剤の製造販売業者に対し、安全性情報を提供する義務が法定されることに注意が必要です。

 

5.まとめ

以上みてきたように、今回の薬機法改正薬機法はその対象が多岐にわたることから、今後制定されていくこととなる施行令や施行規則等を含めて引き続き議論の動向を注視し、これに対応していく必要があります。

(2019年11月28日(2019年12月9日、2020年3月11日更新))

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ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所では、薬機法(医薬品医療機器等法)を始めとするヘルスケア関連規制に関するアドバイス、契約作成・交渉・修正業務、研修、当局・紛争訴訟対応等、関連する法務アドバイスを日常的に提供しています。

 

本書において提供する情報は、あくまで一般的な情報として提供されるものであり、具体的な専門的アドバイスを提供するものではありません。具体的な事案に関するご相談には個別に対応いたしますので改めて担当弁護士(根本鮎子))までお問い合わせください。

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知財: 2020年3月号「中国における新型コロナウイルスによる肺炎の流行に伴う専利関連権利の権利回復に関する規定」

Newsletter (2020年3月) │ 知財

新型コロナウイルスによる肺炎が発生以来、色々な分野に深刻な影響を与えている。知的財産権分野においても疫病による権利の喪失とその回復の問題が注目されつつある問題の一つである。

そこで、国家知識産権局は2020年1月28日に「新型コロナウイルスによる肺炎の流行期間における専利、商標、集積回路配置設計の関連期限事項に関する説明」(即ち、公告第350号)、2月3日に「疫病に関連する権利回復手続きの具体的問題への回答」、2月21日に「新型コロナウイルスによる肺炎の流行期間における専利、商標、集積回路配置設計の関連期限事項に関する補足説明」、3月4日に「新型コロナウイルスによる肺炎の流行期間における専利年金の滞納金の納付関連事項に関する説明」など一連の公告や通知が公布され、新型コロナウイルスによる肺炎の流行に伴い関連期間の規定や、権利回復の手続き、費用の納付等について説明を行っている。

本文では新型コロナウイルスによる肺炎の流行による喪失された専利関連権利の権利回復について纏めてみた。今後、感染状況に伴い、国や政府各部門から更なる関連政策や規定等打ち出される可能性もあるため、自社に不利益を被らないためにこれらの情報を迅速に取得する必要がある。そして、権利の喪失のリスクを避けるために、事前に現地の代理人に、権利の継続を維持する措置を取る様に今からでも指示しておくことをお薦めする。

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法務:「2019年薬機法(医薬品医療機器等法)等改正案と企業に与える影響」

Newsletter (2019年11月) │ 法務

I. はじめに

2019年3月19日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出されました[1]。第198回通常国会での成立はならず、同年10月4日に開会した臨時国会において審議が継続して行われ、11月27日の参院本会議で可決され、成立、12月4日に公布されました(以下「改正薬機法」)。衆議院厚生労働委員会では14項目、参議院厚生労働委員会では11項目の附帯決議が採択されました。

今回の改正薬機法は、5年前に施行された改正薬事法の附則において、施行後5年を目処として改正後の規程等を検討することとされていたことを受けたもので、広い範囲での改正内容となっています。薬機法に関連する企業への規制強化の側面を含んでいるため、今後詳細が定められる省令等の動向を含め注視していきたいトピックです。

なお、改正薬機法の内容は、2018年4月より行われた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会[2]における議論、薬事・食品衛生審議会血液事業部会[3]及び薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会[4]における議論と、同年12月25日に取りまとめられた「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」及び「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について」[5]を踏まえたものとなっています。

改正薬機法が公布されると、公布日から1年以内(但し、変更計画(PACMP)による製造方法等の変更手続きの導入、添付文書の電子的方法による提供、特定の機能を有する薬局の認定、ガバナンスに関する改正内容及び課徴金制度については2年以内、バーコード等の表示については3年以内)に施行されます。

本レターでは、当該改正薬機法の内容と、当該改正が企業に与える影響について紹介します。

II. 改正薬機法の内容

改正薬機法の内容は、1. 医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善、2. 住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し、3. 信頼確保のための法令遵守体制等の整備、4. その他、の4つの大項目から成ります。

 

1.医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善

「医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善」の内容として、(1)「先駆け審査指定制度」の法制化、(2)「条件付早期承認制度」の法制化、(3)変更計画(PACMP)による製造方法等の変更手続きの導入、(4)改良が見込まれている医療機器の継続した改良を可能とする承認審査制度の導入、(5)添付文書の電子的な方法による提供の原則化、(6)医薬品等の包装等へのバーコード等の表示の義務付け、(7)国際整合化に向けたGMP/GCTP調査に見直し、(8)安全供給の確保に向けたQMS調査の見直し等が盛り込まれています。

先駆け指定審査医薬品等は現行法においても運用で優先審査等の対象として扱われていますが、今回の改正では、「先駆的医薬品等」と「特定用途医薬品等」について、法律上の要件を定め、優先審査等の対象となる旨が法律上明確化されます。また、「条件付早期承認制度」についても現行法においても運用が開始されているところ、検証的臨床研究のデータを添付せずに承認申請を行うことができる旨を法律上明確に定めることとなります。また、変更計画(PACMP)による製造方法等の変更手続きの導入により変更手続きの短縮化が見込まれます。

製薬メーカー、医療機器メーカー、再生医療等製品メーカーにおいては、上記の制度を戦略的に利用して開発、承認申請、市販後の変更手続き等を促進していくことが望まれます。

また、(5)添付文書の電子的な方法による提供及び(6)医薬品等の包装等へのバーコード等の表示については、施行までにこれらの項目に対応したオペレーションを構築することが求められます。

 

2.住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し

「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し」の内容としては、(1)薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務及び患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務の法制化、(2)地域連携薬局、専門医療機関連携薬局の認定制度の導入、(3)テレビ電話等による服薬指導の規定、等が盛り込まれています。

薬局事業を営む企業は、(1)の改正により、薬局開設者に、薬剤師の情報提供への配慮義務や薬剤師に対して購入者等の使用状況の把握、購入者等への情報提供・指導及び情報提供・指導内容の記録をさせる等の義務が課せられる点に注意が必要です。また、今後詳細が固められていくこととなる、(2)や(3)といった新たな制度の活用可能性を検討することも考えられます。

(3)のテレビ電話等による服薬指導については、既に特区において国家戦略特別区域法第 20 条の5に規定する国家戦略特別区域処方箋薬剤遠隔指導事業が行われてきました。今回の改正では、そのような薬剤遠隔指導の要件を明確化し特区以外の地域にこれを拡大していくことが見込まれています。薬局がテレビ電話等による遠隔での服薬指導を行う場合には明確化される要件を注視し対応していくことが必要です。

 

3.信頼確保のための法令遵守体制等の整備

「信頼確保のための法令遵守体制等の整備」の内容として、(1)薬機法の許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け、(2)虚偽・誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度の創設、(3)国内未承認の医薬品等の輸入に係る確認制度の法制化、麻薬取締官等による捜査対象化、(4)医薬品として用いる覚せい剤原料について、医薬品として用いる麻薬と同様、自己の治療目的の携行輸入等の許可制度を導入、等が盛り込まれています。ここでは、企業に与える影響の大きい(1)と(2)の改正内容について取り上げます。

 

(1)薬機法の許可等業者に対する法令遵守体制の整備の義務付け

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の製造販売業者、製造業者、薬局、店舗販売業者、配置販売業者、卸売販売業者、採血事業者、高度管理医療機器等の販売業者・貸与業者、賃貸業者、修理業者のガバナンスに関係する改正内容であり、企業にとってインパクトのある改正内容となっています。

ア 責任役員

薬事に関する業務に責任を有する役員を法律上位置づけ、許可申請書に記載することが求められます。「薬事に関する業務に責任を有する役員」とは、株式会社においては、取締役を意味し、執行役員は含まれないとされています。なお、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では当局による責任役員の変更命令権が議論されていましたが、業界による反対もあり、今回の改正薬機法の内容に含めることは見送られています。もっとも2019年11月13日に衆院厚生労働委員会により採択された附帯決議及び11月26日に参院厚生労働委員会により採択された附帯決議には、「役員変更命令の法定化について、本法の施行状況を踏まえ検討を行う」という項目が含まれたため、将来的に役員変更命令の法制化が再度議論される余地が残りました。

イ 法令遵守体制の整備

改正薬機法では、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造販売業者・製造業者に対し、「…業務を適正に遂行することにより、薬事に関する法令の規定の遵守を確保するために」以下の措置を講じる義務、及び措置の内容を記録しこれを適切に保存する義務が追加されます。

  • 品質管理及び製造販売後安全管理に関する業務(製造業者においては製造の管理に関する業務)について、医薬品等総括製造販売責任者(製造業者においては医薬品製造管理者又は医薬部外品等責任技術者)が有する権限を明らかにすること
  • 品質管理及び製造販売後安全管理に関する業務(製造業者においては製造の管理に関する業務)その他の製造販売業者(製造業者)の業務の遂行が法令に適合することを確保するための体制、当該製造販売業者(製造業者)の薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業員の業務の監督に係る体制その他の製造販売業者(製造業者)の業務の適正を確保するために必要なものとして厚生労働省令で定める体制を整備すること
  • 医薬品等総括製造販売責任者(製造業者においては医薬品製造管理者、医薬部外品等責任技術者)その他の厚生労働省令で定める者に、第12条の2第1項各号(製造業者においては第14条2項4号)の厚生労働省令で定める基準を遵守して医薬品等の品質管理及び製造販売後安全管理(製造業者においては製造管理又は品質管理)を行わせるために必要な権限の付与及びそれらの者が行う業務の監督その他の措置
  • その他従業員に対して法令遵守のための指針を示すことその他の業務の適正な遂行に必要なものとして厚生労働省令で定める措置

また、これまでの総括製造販売責任者・製造管理者の意見の尊重義務に加え、これらの者として必要な能力及び経験を有する者をおかなければならないとの規定が追加されるとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは、当該措置を講じ、かつ、講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを適切に保存する義務が設けられます。これまでに記録・保存の社内プロセスの整備されていない企業は対応が必要になる事項です。

 

<法令遵守体制の整備の全体像>

医療機器・再生医療等製品の製造販売業者・製造業者や薬局、店舗販売業者、配置販売業者、卸売販売業者、採血事業者、高度管理医療機器等の販売業者・貸与業者、賃貸業者、修理業者についても、改正薬機法において、同様に法令遵守体制の整備に関する規定がおかれています。

企業においては、自社の薬機法遵守の観点からの法令遵守体制の見直しが求められるでしょう。具体的な内容については今後厚生労働省令、施行規則、通知等で定められることになるため注視していくことが必要ですが、基本的には会社法上の内部統制(と金融商品取引法に基づく内部統制(財務報告に係る内部統制))の考え方を参考に、①ルールを決める、②決めたルールを伝達・教育する、③ルールに従って仕事を行い、それを記録化する、④記録を他者が監督する、というステップで薬機法遵守の体制を整備していくことが求められていくのではないかと考えられます。具体的には、企業行動規範の策定(見直し)や公表、薬事に関する法令遵守の重要性についてのトップによるメッセージ、組織図・社内規程・手順書・記録の保存のルール・内部通報制度等の見直し、適切な社内トレーニング等を行っていくことを検討することが考えられます。また、ヘルスケア事業を行う企業の買収等を行う際には、デューデリジェンスの中で、これまで以上に薬事に関する法令の遵守体制についても検討が必要になると思われます。

 

(2)虚偽・誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度の創設

薬機法改正薬機法における課徴金制度は、一連の研究不正の事件を受けて今回新たに導入されるもので、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品(併せて「医薬品等」)の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大広告を行った期間に取引をした対象医薬品等の対価の合計額に4.5%をかけた金額が課徴金額となることが定められています。なお、景品表示法の課徴金の計算に使われる%が3%であるのに対し、薬機法の課徴金が4.5%であるのは、ヘルスケア企業の営業利益率を勘案してのものとされています[6]

[6] 第200回国会 厚生労働委員会 第5号(令和元年11月13日(水曜日))議事録

この課徴金制度には景品表示法による優良誤認表示に該当する場合や許可・登録等の取消し、改善措置命令等を受ける場合の調整規定が定められており、独占禁止法や金融商品取引法等が課徴金の義務的賦課制度を採用しているのと異なり、課徴金納付命令を行わないことができる場合が定められていることが特徴的です。また自主申告の場合の減免制度も設けられています。なお、虚偽・誇大広告をやめてから5年を経過している行為や対価合計額が5000万円未満の場合については課徴金を課されないこととされています。

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインの施行等、ヘルスケア業界における広告規制や当局の監視は年々厳しくなっているといえます。企業としては、広告の監視体制を益々強化していくことが求められます。

4.その他

「その他」の改正内容として、(1)医薬品等の安全性の確保や危害の発生防止等に関する施策の実施状況を評価・監視する医薬品等行政評価・監視委員会の設置、(2)科学技術の発展等を踏まえた採血の制限の緩和、等が盛り込まれています。

(1)については、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会により2010年4月28日にとりまとめられた「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」[7]を踏まえて設置されるものです。

(2)については、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律[8](「血液法」)を改正することによって、「医薬品等の研究開発において試験に用いる物その他の医療の質又は保険衛生の向上に資する物」について、採血制限を緩和する等、医療の発展に寄与する採血を認める内容です。現状、例えば、医薬品等の開発において、候補物質の有効性、毒性などの評価に用いられるiPS心筋細胞等の血液由来特定研究用具、医学的検査の標準品が「医薬品等の研究開発において試験に用いる物その他の医療の質又は保険衛生の向上に資する物」として挙げられていますが、企業の研究開発に資する内容と考えられ、具体的な「物」の特定を引き続き注視していきたいところです。また、血液法の改正により、血液製剤の原料たる原料血漿を製造した製造業者、血液製剤を製造した製造業者は、新たに血液製剤の製造販売業者に対し、安全性情報を提供する義務が法定されることに注意が必要です。

 

5.まとめ

以上みてきたように、今回の薬機法改正薬機法はその対象が多岐にわたることから、今後制定されていくこととなる施行令や施行規則等を含めて引き続き議論の動向を注視し、これに対応していく必要があります。

(2019年11月28日(12月9日更新)

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ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所では、薬機法(医薬品医療機器等法)を始めとするヘルスケア関連規制に関するアドバイス、契約作成・交渉・修正業務、研修、当局・紛争訴訟対応等、関連する法務アドバイスを日常的に提供しています。

 

本書において提供する情報は、あくまで一般的な情報として提供されるものであり、具体的な専門的アドバイスを提供するものではありません。具体的な事案に関するご相談には個別に対応いたしますので改めて担当弁護士(根本鮎子))までお問い合わせください。

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知財: 2019年8月号「台湾の医薬品パテントリンケージ制度に関する最新情報」

Newsletter (2019年8月) │ 知財

今般の台湾薬事法の改正により増設された医薬品のパテントリンケージ制度が下記の通り正式に施行されることになりました。また、パテントリンケージ制度を実施するための施行規則及び詳細な手続きの策定も進められており、それらの最新情報についてご報告いたします。

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知財:2019年6月号「損害額の算定方法に関する判断基準についての知財高裁大合議判決」

Newsletter (2019年6月) │ 知財

IPニュースレター2019年6月号『損害額の算定方法に関する判断基準についての知財高裁大合議判決』が発行されました。

 

判決年月日:令和元年6月7日
事件番号:平成30年(ネ)第10063号
担当部:知財高裁大合議(裁判長・高部真規子所長)

 

 現行特許法によれば、特許権の侵害による損害額の立証が困難であることから 、侵害者が侵害品から得た利益を損害額として推定できる旨が規定されています(102条2項)。この「利益」とは「限界利益」と解されており、侵害品の売り上げから、侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除し、他方、推定を覆滅する事情としての侵害者側の営業努力や、侵害品の性能などを勘案して賠償額が決められます。
本件では、化粧品の特許侵害を巡り、特許権者である化粧品メーカーが侵害者に対して損害賠償を請求しており、侵害者が支払う賠償金の減額が認められるかなどが争われていました。

 

詳細は、こちらをご覧ください。

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知財: 2018年11月号「中国特許無効審判におけるマーカッシュクレームの訂正基準について ~最高人民法院の再審事例から分かる~」

Newsletter (2018年11月) │ 知財

China IPニュースレター2018年11月号『中国特許無効審判におけるマーカッシュクレームの訂正基準について~最高人民法院の再審事例から分かる~』が発行されました。

 

特許法でいうマーカッシュクレームとは、一つの請求項の中に多数の変数が存在し、そしてその変数が多数の選択肢を有する、化学・医薬分野でよく使われる特殊的なクレームです。化合物がマーカッシュクレームによってクレームされている場合、一旦権利化されると、その権利範囲は作用・効果に係わり無く、これに包含されるすべての化合物にまで及び、特許権者の利益を最大化できます。このようなクレームの形式は広く活用されてきており、化学分野の出願の全体の30%以上に達していると言われています。

 

中国では特許審査基準においては、マーカッシュクレームの単一性( 専利審査指南2010第二部分第10章第8.1マーカッシュクレームの単一性)について規定があるが、それ以外については何も言及されていません。実務の中でマーカッシュクレームの属性(即ち、権利範囲の解釈)や無効審判における訂正方式、つまりマーカッシュクレームにおける変数の一部の選択肢を削除する訂正ができるか否やかについて、従来から実務的にも理論的にも議論されてきました(例えば、特許94115915.9の無効審決取消訴訟、特許97197460.8の無効審決取消訴訟)。

 

このような中で2017年12月、中国の最高人民法院により十例の創新知的財産事例2017に収録された「(2016)最高法行再第41号」の再審事件で、最高人民法院は3年に渡って慎重に審理を重ねてきた、マーカッシュクレームの訂正基準を明確にする判決を下しました。理論上の争いは依然として続いていくかもしれませんが、この判決は、従来各裁判所の判断基準が統一されていない問題を解決し、今後の類似の事件に対して指導的な意味を有することは間違いないと考えられます。

 

当該再審事件についての詳細は、こちらをご覧ください。

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法務: 「職場におけるハラスメント」

Newsletter (2018年8月) │ 法務

米国では、#MeTooの動きが急激に広がり、ソーシャルメディアのおかげでセクシュアルハラスメントに関する認識が高まりました。日本でも#MeTooの動きは広がりを見せ、政治家や官僚がセクハラ行為の疑いで耳目を集め、マスコミ報道も増えました。また、日本政府は、安倍首相の2017年「働き方改革実行計画」の一環として、職場におけるパワーハラスメント対策を検討すべき問題であるとし、2018年3月30日には厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書が取りまとめられ、労働政策審議会でさらなる議論が行われることとされました。ハラスメントの問題は古くて新しい問題ともいえ、本ニュースレターでは、ハラスメントの定義と企業がとるべき対応策について取り上げます。

職場におけるハラスメントは、複数の形態が考えられますが、日本において昨今特に紛争になるケースが多いのは、①パワーハラスメント、②セクシュアルハラスメント、③マタニティハラスメントの3つです。

パワーハラスメントは、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(平成24年3月15日)によれば、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいいます。具体的には、①暴行・傷害(身体的な攻撃)、②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)、③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)、④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大要求)、⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)、⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)の6つの類型が示されています。「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書においても、こうした円卓会議での概念をもとに具体的な事案の検討が行われています。

セクシュアルハラスメントについては、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和四十七年法律第百十三号。その後の改正を含む)(「雇用機会均等法」)第11条に定めがあり、事業主は、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされています。当該講じるべき必要な措置については、厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号。その後の改正を含む)(「セクハラ指針」)により示されています。セクシュアルハラスメントには2つの異なる類型があります。まず1つめは、「対価型セクシャルハラスメント」で、これは、従業員の意に反する性的な言動に対する労働者の対応に不利益が関連づけられているもので、従業員がその上司との性的関係を拒否したために解雇される場合等があります。2つめは「環境型セクシュアルハラスメント」で、職場において行われる従業員の意に反する性的な言動により職場環境が不快なものとなり、従業員の能力の発揮に大きな悪影響が生じることで、例えば職場にヌードポスターが貼ってあって従業員が自らの業務に集中できない、といった例があります。

マタニティハラスメントについては、雇用機会均等法弟11条の2に定めがあり、「職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされています。当該講じるべき必要な措置については、厚生労働省の「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号。その後の改正を含む)(「マタハラ指針」)により示されています。なお、労働基準法(昭和22年法律第49号、その後の改正を含む)および育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号、その後の改正を含む)(「育児・介護休業法」)により、企業は、妊娠している従業員に対し、一定期間の休暇(出産予定日の6週間前からおよび出産日翌日から8週間の産前・産後休暇および育児休業)を与えることとされています。

職場におけるハラスメントの企業に与える影響は大きく、従業員は、職場におけるハラスメントにより、身体的・精神的苦痛を受け、企業の生産性やモラルの低下、さらには従業員の離職等の問題も生じます。ハラスメントにより従業員との間に訴訟・紛争が生じれば、企業はレピュテーションリスクにさらされ、従業員のメンタルヘルスにつながるようなハラスメントについては労働基準監督署等による調査の対象となったり、警告を受ける可能性もあります。

では、職場におけるハラスメントを防止し、これに対応するために、企業は何をすればよいのでしょうか。厚生労働省では、7つのメニューを記載した「パワーハラスメント対策導入マニュアル」やセクハラ指針・マタハラ指針等で企業が講じるべき措置を公表しており、参考になります。

まず、第一歩として、経営陣が社内ではいかなるハラスメントも許容されないと明言する強いメッセージを発するべきです。次に企業の就業規則、ハラスメント防止規程等の社内ルールの見直しを行い、労使協定を締結する等、ハラスメントの防止のために当該ルールを決定し、必要に応じて強化するべきです。社内ルールは速やかに公表し、メールやイントラネット等で周知し、また、従業員向けのトレーニング等の開催を通じて実行していくべきと考えられます。

また、企業は、全従業員向けの匿名のアンケートを定期的に実施すること等を通じて自社のハラスメントの実態を把握するとともに、新入社員に対して就業規則やハラスメントに関する社内ポリシーについての研修を行い、在職の役員や従業員に対しても定期的な研修を行うべきです。研修は、パートタイム従業員への研修や、役員・管理職向けに特化した特別研修も含めて、全社的に行うべきです。ハラスメントの事案にはパートタイム従業員が被害者となる件数も多いのが実態です。これは、従業員の中には、パートタイム従業員が正規従業員と同等の権利を有し、同様にハラスメントから保護されるべきとの認識が低い場合があることに起因しています。研修は、人事部等の社内組織または外部のアドバイザー(弁護士や産業カウンセラー等の専門家)により継続して行われることが効果的です。

上記に加え、社内外にハラスメントに関する相談窓口を設けることも重要な方策のひとつです。従業員に対しては、ハラスメントを受けまたはハラスメントを目撃したときの相談窓口が周知されます。企業は、外部相談窓口として、外部の法律事務所やアドバイザーに窓口を設置する場合もあります。従業員が相談しやすい相談窓口を設置することが重要です。企業が相談窓口を設置しないと、ハラスメントを受けた従業員は、行政機関や外部の弁護士に相談することを迫られますが、企業としてはできるだけ早期に相談を受けるほうが対策を講じやすく好ましい手段であると考えられます。

政府、従業員およびメディアによるハラスメント問題への関心が高まる中、企業もハラスメント問題に対し無関心ではいられず、職場における様々な態様のハラスメントを防止し、これに取り組むための積極的な対策を講じていく必要があります。

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ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所では、社内規則等に関するアドバイス、ハラスメント研修、ハラスメント調査、外部相談窓口、当局・紛争訴訟対応等のハラスメントに関連する法務アドバイスを日常的に提供しています。

 

本書において提供する情報は、あくまで一般的な情報として提供されるものであり、具体的な専門的アドバイスを提供するものではありません。具体的な事案に関するご相談には個別に対応いたしますので改めて担当(外国法事務弁護士田辺グラント)・弁護士根本鮎子))までお問い合わせください。

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税務:「2018年の税法改正に関して」

Newsletter (2018年7月) │ 税務

1. 法人税

(改正のポイント)

  • 所得拡大促進税制の見直し
  • 一定の条件を満たさない大法人に対する税額控除の不適用
  • 情報連携投資等促進税制の創設
  • 申告手続の電子化 

所得拡大促進税制の見直し

改正前は次の3要件をすべて満たした場合に、基準年度(12月決算法人の場合には2013年)と比較して、給与等支給額が増加した金額の10%が法人税額から控除されていました(法人税額の10%(中小企業者は20%)を限度)。

  1. 基準年度と比較して、給与等支給額が5%以上(中小企業者は3%以上)増加している
  2. 給与等支給額が前期の給与等支給額以上である
  3. 平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額から2%以上増加している(中小企業者は前期を上回る)

 

この制度が2018年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する事業年度においては、大法人向けと中小企業者向けに区分され、それぞれに異なる適用要件が設けられることになりました。

大法人中小企業者(*)
賃上げ要件平均給与等支給額が前期から3%以上増加していること平均給与等支給額が前期から1.5%以上増加していること
設備投資要件国内設備投資額が当期の減価償却費の総額の90%以上であること適用なし
控除額前期の給与等支給額と比較して、増加した額の15%(法人税額の20%を限度)前期の給与等支給額と比較して、増加した額の15%(法人税額の20%を限度)

(*)中小企業者とは、資本金または出資金の額が1億円以下の法人で、かつ、同一の大規模法人(資本金若しくは出資金の額が1億円を超える法人)に発行済株式又は出資の総数の2分の1以上を所有されていない法人または2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されていない法人です。

 

また、特に人材投資に積極的な法人に対しては、以下の要件を満たした場合、控除額を引き上げる制度が採用されました。

大法人中小企業者
要件教育訓練費の額が比較教育訓練費(前期及び前々期の平均)から20%以上増加していること平均給与等支給額が前期から2.5%以上増加し、かつ、

以下のいずれかの要件を満たすこと

①     当期の教育訓練費の額が前期から10%以上増加している。もしくは、

②     事業年度終了の日まで主務大臣から中小企業等経営強化法の経営力強化計画の認定を受け、かつ、その計画に従い経営力の向上が行われたものとして証明を受けていること

控除額前期の給与等支給額と比較して、増加した額の20%(法人税額の20%を限度)前期の給与等支給額と比較して、増加した額の25%(法人税額の20%を限度)

一定の条件を満たさない大法人に対する税額控除の不適用

2018年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する事業年度においては、以下のすべての要件に該当する大法人に対して、一定の税額控除の適用が制限されます。

  1. 所得の金額が前期の所得の金額を超えること
  2. 平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額以下であること
  3. 国内設備投資額が前期の減価償却費の総額の10%以下であること

(制限される税額控除)

  • 試験研究費の税額控除
  • 地域未来投資の税額控除
  • 情報連携投資の税額控除

情報連携投資等促進税制の創設

生産性向上特別措置法に基づく、革新的データ産業活用計画の認定を受けた青色申告法人が、その計画に従って情報連携利活用設備(ソフトウェア及びソフトウェアとともに取得する機械装置及び器具備品(試験研究用のものを除く)で取得価額の合計が5000万円以上のもの)を取得し、事業の用に供したときは、特別償却か税額控除を選択できる情報連携等投資促進税制(IoT税制)が創設されました。

 

IoT税制に基づく控除額は以下の通りです。生産性向上特別措置法の施行の日から2021年3月31日までの間に取得した情報連携利活用設備について適用されます。

税額控除特別償却
平均給与等支給額の増加が前期と比較して3%未満の場合取得価額 x 3%(法人税額の15%を限度)取得価額 x 30%
平均給与等支給額の増加が前期と比較して3%以上の場合取得価額 x 5%(法人税額の20%を限度)

申告手続の電子化

2020年4月1日以後に開始する事業年度から、内国法人である大法人(資本金の額が1億円を超える法人)は中間申告を含む法人税・消費税の申告書の提出を電子申告により行うことが義務化されます。やむを得ない事情がある場合を除き、書面での提出は無申告の扱いとなります。

2. 所得税

 

(改正のポイント)

  • 給与所得控除が一律10万円引き下げられ、上限額が195万円になります
  • 基礎控除が一律10万円引き上げられますが、合計所得が2500万円を超える場合には適用がなくなります
  • 公的年金控除が一律10万円引き下げられ(公的年金以外の所得が1000万円を超える場合には一律20万円、2000万円を超える場合には一律30万円が引き下げられます)、新たに控除額に上限が設けられました
  • 所得金額調整控除が創設されました

給与所得控除の引き下げ

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、給与所得控除の金額が一律10万円引き下げられ、上限額が195万円になります。改正後の給与所得控除の金額は以下の通りです。

(改正前、所得税、住民税共通)

給与等の収入金額給与所得控除額
180万円以下収入金額x40%(最低650,000円)
180万円超~360万円以下収入金額x30%+180,000円
360万円超~660万円以下収入金額x20%+540,000円
660万円超~1000万円以下収入金額x10%+1,200,000円
1000万円超2,200,000円

改正後、所得税、住民税共通)

給与等の収入金額給与所得控除額
162.5万円以下550,000円
162.5円超~180万円以下収入金額x40%-100,000円
180万円超~360万円以下収入金額x30%+80,000円
360万円超~660万円以下収入金額x20%+440,000円
660万円超~850万円以下収入金額x10%+1,100,000円
850万円超1,950,000円

 

基礎控除の引き上げ

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、基礎控除が一律10万円引き上げられますが、合計所得の金額が2500万円を超える場合には基礎控除の適用がなくなります。改正後の基礎控除の金額は以下の通りです。

(所得税)

合計所得金額基礎控除(改正前)基礎控除(改正後)
2400万円以下380,000円480,000円
2400万円超~2450万円以下380,000円320,000円
2450万円超~2500万円以下380,000円160,000円
2500万円超380,000円0円

(住民税)

合計所得金額基礎控除(改正前)基礎控除(改正後)
2400万円以下330,000円430,000円
2400万円超~2450万円以下330,000円290,000円
2450万円超~2500万円以下330,000円150,000円
2500万円超330,000円0円

公的年金控除の引き下げ

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、公的年金控除が一律10万円引き下げられ、新たに控除額に上限が設けられました。改正後の公的年金控除の金額は以下の通りです。

(65歳未満の場合、所得税、住民税共通)

公的年金等の収入金額(A)公的年金控除額   (改正前)公的年金控除額   (改正後*)
130万円以下700,000円600,000円
130万円超~410万円以下(A)x25%+375,000円(A)x25%+275,000円
410万円超~770万円以下(A) x 15%+785,000円(A)x15%+685,000円
770万円以超~1000万円以下(A) x5%+1,555,000円(A)x5%+1,455,000円
1000万円超1,955,000円

(*) 公的年金以外の合計所得金額が1000万円を超える場合にはそれぞれ10万円、2000万円を超える場合にはそれぞれ20万円ずつ追加で引き下げられます。

(65歳以上の場合、所得税、住民税共通)

公的年金等の収入金額(A)公的年金控除額(改正前)公的年金控除額(改正後*)
330万円以下1,200,000円1,100,000円
330万円超~410万円以下(A)x25%+375,000円(A)x25%+275,000円
410万円超~770万円以下(A) x 15%+785,000円(A)x15%+685,000円
770万円超~1000万円以下(A) x5%+1,555,000円(A)x5%+1,455,000円
1000万円超1,955,000円

(*) 公的年金以外の合計所得金額が1000万円を超える場合にはそれぞれ10万円、2000万円を超える場合にはそれぞれ20万円ずつ追加で引き下げられます。

所得金額調整控除の創設

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、その年の給与収入が850万円を越え、かつ、以下のいずれかに該当する場合には、所得調整控除額が給与所得の金額から控除されます。

  • 特別障害者に該当する者
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
  • 特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族を有する者

 

(所得調整控除額)

(給与等の収入金額 – 850万円)x10%(*)

(*)控除額は15万円を上限とします

3.資産税

 

(改正のポイント)

  • 外国籍の長期滞在者に対する出国後の相続税または贈与税について、納税義務の見直しが行われました

外国籍の長期居住者に対する相続税・贈与税の納税義務の見直し

長期滞在外国人(過去15年以内に国内に住所を有していた期間の合計が10年超である外国人)は出国後5年以内に行う相続・贈与については、国内・国外の財産に対して相続税・贈与税が課税されていました。

 

これについて2018年4月1日以降、国外に居住する長期滞在外国人が行う相続・贈与においては、国外財産を相続税・贈与税の課税対象から除く改正が行われました。ただし、出国後に贈与を行い、出国後2年以内に再び国内に住所を移した場合に関してはこの適用がありません。

本タックス・ニュースは改正税法等に関して一般的な概略をご紹介する目的で作成しております。個別の案件に関しては弊事務所までお問い合わせ下さい。

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知財: 2018年5月号「中国におけるスイス・タイプ・クレームの現状」

China IPニュースレター2018年5月号『中国におけるスイス・タイプ・クレームの現状』が発行されました。

 

中国の医薬分野においては、ある既知の化合物又は組成物が新しい効能や効果を有すると発見したとき、このような発明を保護するために、直接に「物質XがY病を予防又は治療するための使用」又は「物質Xを使用してY病を予防又は治療する方法」などの書き方では、中国特許法第二十五条の「疾病の診断と治療方法」に該当し、特許権は付与されません。このような問題を克服するために、実務上、スイス・タイプ・クレーム、即ち「物質Xの、Y病の治療薬を製造するための使用」に形式を変えることがよくあります。スイス・タイプ・クレームには、投与対象、投与形態、投与量、投与時間間隔などの特徴も組み込むことができるため、このような投与対象、投与形態、投与量、投与時間間隔などに特徴を有するスイス・タイプ・クレームの特許出願も数多く見受けられます。これらの特徴がスイス・タイプ・クレームに対して実際に限定的作用を持つか否かは、クレームの特許性判断に極めて重要なことです。

 

詳細は、こちらをご覧ください。

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