新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、法務省は、本年4月3日以降に再入国許可により本邦を出国した外国人が、本邦への上陸申請日前14日以内において、法務省が指定する対象国・地域への滞在歴がある等の条件に該当する場合には、特別永住者の資格を有する外国人等を除き、特段の事情が認められない限り、再入国を原則として拒否する運用を開始しました(本年4月時点における法務省の運用については、こちらをご参照ください。)。
その後、令和2年8月12日現在、法務省は、本邦から再入国許可により出国した外国人が滞在した場合、特段の事情がない限り上陸拒否の対象となる地域(※1)を、当初の73か国から、146か国にまで拡大しています。
そして、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、特段の事情があるものとして、上陸が許可される運用となっています。
(1)滞在先の国・地域が上陸拒否の対象地域に指定された日(ただし、4月2日以前に上陸拒否の対象地域に指定された国・地域については4月3日)の前日までに再入国許可(みなし再入国許可を含む。以下同じ。) により出国した外国人(ただし、4月3日以降に出国した外国人については、日本出国日時点において既に上陸拒否の対象地域とされていた国・地域に滞在歴のない者に限る。)
(2)「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置」(※2)に沿って上陸申請する外国人
(3)上記(1)及び(2)のほか、特に人道上配慮すべき事情があるときなど、個別の事情に応じて特段の事情が認められるもの
また、法務省は、上記(3)に関し、滞在先の国・地域が上陸拒否の対象地域に指定された日以降に当該地域に再入国許可により出国した外国人(今後、本邦から当該国・地域に出国しようとする場合を含む。)が、特に人道上配慮すべき特段の事情があるとして再入国が許可される具体的な事例として、以下のような場合を挙げています。
・外国に居住する重篤な状態にある親族を見舞うため又は死亡した親族の葬儀に参列するために出国する必要があった。
・外国の医療機関での手術等の治療(その再検査を含む)や出産のために出国する必要があった。
・外国の裁判所から証人等として出頭の要請を受け、出国する必要があった。
・日本で初等中等教育を受けている児童・生徒が、母国等での入学試験の受験等、進学に必要な手続を行うために出国する必要があり、その後卒業に向け引き続き日本の同一の教育機関で初等中等教育を受けるために再入国する必要がある(同伴する保護者を含む)。
上記のとおり、特段の事情が認められる場合は、葬儀・出産の対応が必要な場合、自らの生命身体に関する治療が必要な場合、裁判所等の行政機関から要請があった場合又は教育上やむを得ない場合等、人道上個別に配慮すべき事情があるときに限られています。そのため、ビジネス目的で、上陸拒否の対象国・地域へ渡航を行った場合は、特段の事情がないものとして、再入国が禁止されるおそれが高くなっています。
外資企業の日本法人のご担当者様におかれては、法務省の対応方針を踏まえて、引き続き、本邦在留の外国人役員・従業員(特別永住者を除く)による上陸拒否対象国・地域への渡航許可を禁止する等、対応を慎重に検討する必要があります。
本件に関し、ご質問等ございましたら弊所法律部(law@se1910.com)までお問い合わせください。
※1
上陸拒否対象国・地域の一覧
- アジア:インドネシア、シンガポール、タイ、韓国、台湾、中国(香港及び マカオを含む。)、フィリピン、ブルネイ、 ベトナム、マレーシア、モルディブ、インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパール
- 大洋州:オーストラリア、ニュージーランド
- 北米:カナダ、米国
- 中南米:エクアドル、チリ、ドミニカ国、パナマ、ブラジル、ボリビア、アンティグア・バーブーダ、セントクリストファー・ネービス、ドミニカ共和国、バルバトス、ペルー
- 欧州:アイスランド、アイルランド、アルバニア、アルメニア、アンドラ、 イタリア、英国、エストニア、オーストリア、オランダ、北マケドニ ア、キプロス、ギリシャ、クロアチア、コソボ、サンマリノ、スイス、 スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェ コ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、バチカン、ハンガリー、フィ ンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴ ビナ、ポーランド、ポルトガル、マルタ、モナコ、モルドバ、モンテ ネグロ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルーマニア、 ルクセンブルク、ウクライナ、ベラルーシ、ロシア、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ジョージア、ウズベキスタン
- 中東:イスラエル、イラン、トルコ、バーレーン、アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、アフガニスタン、イラク、レバノン、パレスチナ
- アフリカ:エジプト、コートジボワール、コンゴ民主共和国、モーリシャス、モロッコ、ジブチ、カーボベルデ、ガボン、ギニアビサウ、サントメ・プリンシペ、赤道ギニア、ガーナ、ギニア、南アフリカ、アルジェリア、エスワティニ、カメルーン、セネガル、中央アフリカ、モーリタニア、ケニア、コモロ、コンゴ共和国、シエラレオネ、スーダン、ソマリア、ナミビア、ボツワナ、マダガスカル、リビア、リベリア
※2
「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置」は、感染状況が落ち着いている上陸拒否の対象地域を対象として、ビジネス上必要な人材等の出入国を、出入国前検査証明や接触確認アプリのインストール等の追加的な防疫措置を条件に試行的に実施するものである(詳細は外務省ホームページ参照)。
参考:
・法務省「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について」令和2年8月12日現在
・法務省「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否の措置に関し、個別の事情に応じて特段の事情があるものとして再入国等を許可することのある具体的な事例」令和2年8月12日現在
・外務省「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について」令和2年8月13日