税務:「2018年の税法改正に関して」

Newsletter (2018年7月) │ 税務

1. 法人税

(改正のポイント)

  • 所得拡大促進税制の見直し
  • 一定の条件を満たさない大法人に対する税額控除の不適用
  • 情報連携投資等促進税制の創設
  • 申告手続の電子化 

所得拡大促進税制の見直し

改正前は次の3要件をすべて満たした場合に、基準年度(12月決算法人の場合には2013年)と比較して、給与等支給額が増加した金額の10%が法人税額から控除されていました(法人税額の10%(中小企業者は20%)を限度)。

  1. 基準年度と比較して、給与等支給額が5%以上(中小企業者は3%以上)増加している
  2. 給与等支給額が前期の給与等支給額以上である
  3. 平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額から2%以上増加している(中小企業者は前期を上回る)

 

この制度が2018年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する事業年度においては、大法人向けと中小企業者向けに区分され、それぞれに異なる適用要件が設けられることになりました。

大法人中小企業者(*)
賃上げ要件平均給与等支給額が前期から3%以上増加していること平均給与等支給額が前期から1.5%以上増加していること
設備投資要件国内設備投資額が当期の減価償却費の総額の90%以上であること適用なし
控除額前期の給与等支給額と比較して、増加した額の15%(法人税額の20%を限度)前期の給与等支給額と比較して、増加した額の15%(法人税額の20%を限度)

(*)中小企業者とは、資本金または出資金の額が1億円以下の法人で、かつ、同一の大規模法人(資本金若しくは出資金の額が1億円を超える法人)に発行済株式又は出資の総数の2分の1以上を所有されていない法人または2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されていない法人です。

 

また、特に人材投資に積極的な法人に対しては、以下の要件を満たした場合、控除額を引き上げる制度が採用されました。

大法人中小企業者
要件教育訓練費の額が比較教育訓練費(前期及び前々期の平均)から20%以上増加していること平均給与等支給額が前期から2.5%以上増加し、かつ、

以下のいずれかの要件を満たすこと

①     当期の教育訓練費の額が前期から10%以上増加している。もしくは、

②     事業年度終了の日まで主務大臣から中小企業等経営強化法の経営力強化計画の認定を受け、かつ、その計画に従い経営力の向上が行われたものとして証明を受けていること

控除額前期の給与等支給額と比較して、増加した額の20%(法人税額の20%を限度)前期の給与等支給額と比較して、増加した額の25%(法人税額の20%を限度)

一定の条件を満たさない大法人に対する税額控除の不適用

2018年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する事業年度においては、以下のすべての要件に該当する大法人に対して、一定の税額控除の適用が制限されます。

  1. 所得の金額が前期の所得の金額を超えること
  2. 平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額以下であること
  3. 国内設備投資額が前期の減価償却費の総額の10%以下であること

(制限される税額控除)

  • 試験研究費の税額控除
  • 地域未来投資の税額控除
  • 情報連携投資の税額控除

情報連携投資等促進税制の創設

生産性向上特別措置法に基づく、革新的データ産業活用計画の認定を受けた青色申告法人が、その計画に従って情報連携利活用設備(ソフトウェア及びソフトウェアとともに取得する機械装置及び器具備品(試験研究用のものを除く)で取得価額の合計が5000万円以上のもの)を取得し、事業の用に供したときは、特別償却か税額控除を選択できる情報連携等投資促進税制(IoT税制)が創設されました。

 

IoT税制に基づく控除額は以下の通りです。生産性向上特別措置法の施行の日から2021年3月31日までの間に取得した情報連携利活用設備について適用されます。

税額控除特別償却
平均給与等支給額の増加が前期と比較して3%未満の場合取得価額 x 3%(法人税額の15%を限度)取得価額 x 30%
平均給与等支給額の増加が前期と比較して3%以上の場合取得価額 x 5%(法人税額の20%を限度)

申告手続の電子化

2020年4月1日以後に開始する事業年度から、内国法人である大法人(資本金の額が1億円を超える法人)は中間申告を含む法人税・消費税の申告書の提出を電子申告により行うことが義務化されます。やむを得ない事情がある場合を除き、書面での提出は無申告の扱いとなります。

2. 所得税

 

(改正のポイント)

  • 給与所得控除が一律10万円引き下げられ、上限額が195万円になります
  • 基礎控除が一律10万円引き上げられますが、合計所得が2500万円を超える場合には適用がなくなります
  • 公的年金控除が一律10万円引き下げられ(公的年金以外の所得が1000万円を超える場合には一律20万円、2000万円を超える場合には一律30万円が引き下げられます)、新たに控除額に上限が設けられました
  • 所得金額調整控除が創設されました

給与所得控除の引き下げ

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、給与所得控除の金額が一律10万円引き下げられ、上限額が195万円になります。改正後の給与所得控除の金額は以下の通りです。

(改正前、所得税、住民税共通)

給与等の収入金額給与所得控除額
180万円以下収入金額x40%(最低650,000円)
180万円超~360万円以下収入金額x30%+180,000円
360万円超~660万円以下収入金額x20%+540,000円
660万円超~1000万円以下収入金額x10%+1,200,000円
1000万円超2,200,000円

改正後、所得税、住民税共通)

給与等の収入金額給与所得控除額
162.5万円以下550,000円
162.5円超~180万円以下収入金額x40%-100,000円
180万円超~360万円以下収入金額x30%+80,000円
360万円超~660万円以下収入金額x20%+440,000円
660万円超~850万円以下収入金額x10%+1,100,000円
850万円超1,950,000円

 

基礎控除の引き上げ

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、基礎控除が一律10万円引き上げられますが、合計所得の金額が2500万円を超える場合には基礎控除の適用がなくなります。改正後の基礎控除の金額は以下の通りです。

(所得税)

合計所得金額基礎控除(改正前)基礎控除(改正後)
2400万円以下380,000円480,000円
2400万円超~2450万円以下380,000円320,000円
2450万円超~2500万円以下380,000円160,000円
2500万円超380,000円0円

(住民税)

合計所得金額基礎控除(改正前)基礎控除(改正後)
2400万円以下330,000円430,000円
2400万円超~2450万円以下330,000円290,000円
2450万円超~2500万円以下330,000円150,000円
2500万円超330,000円0円

公的年金控除の引き下げ

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、公的年金控除が一律10万円引き下げられ、新たに控除額に上限が設けられました。改正後の公的年金控除の金額は以下の通りです。

(65歳未満の場合、所得税、住民税共通)

公的年金等の収入金額(A)公的年金控除額   (改正前)公的年金控除額   (改正後*)
130万円以下700,000円600,000円
130万円超~410万円以下(A)x25%+375,000円(A)x25%+275,000円
410万円超~770万円以下(A) x 15%+785,000円(A)x15%+685,000円
770万円以超~1000万円以下(A) x5%+1,555,000円(A)x5%+1,455,000円
1000万円超1,955,000円

(*) 公的年金以外の合計所得金額が1000万円を超える場合にはそれぞれ10万円、2000万円を超える場合にはそれぞれ20万円ずつ追加で引き下げられます。

(65歳以上の場合、所得税、住民税共通)

公的年金等の収入金額(A)公的年金控除額(改正前)公的年金控除額(改正後*)
330万円以下1,200,000円1,100,000円
330万円超~410万円以下(A)x25%+375,000円(A)x25%+275,000円
410万円超~770万円以下(A) x 15%+785,000円(A)x15%+685,000円
770万円超~1000万円以下(A) x5%+1,555,000円(A)x5%+1,455,000円
1000万円超1,955,000円

(*) 公的年金以外の合計所得金額が1000万円を超える場合にはそれぞれ10万円、2000万円を超える場合にはそれぞれ20万円ずつ追加で引き下げられます。

所得金額調整控除の創設

2020年以降の所得税(2021年以降の住民税)から、その年の給与収入が850万円を越え、かつ、以下のいずれかに該当する場合には、所得調整控除額が給与所得の金額から控除されます。

  • 特別障害者に該当する者
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
  • 特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族を有する者

 

(所得調整控除額)

(給与等の収入金額 – 850万円)x10%(*)

(*)控除額は15万円を上限とします

3.資産税

 

(改正のポイント)

  • 外国籍の長期滞在者に対する出国後の相続税または贈与税について、納税義務の見直しが行われました

外国籍の長期居住者に対する相続税・贈与税の納税義務の見直し

長期滞在外国人(過去15年以内に国内に住所を有していた期間の合計が10年超である外国人)は出国後5年以内に行う相続・贈与については、国内・国外の財産に対して相続税・贈与税が課税されていました。

 

これについて2018年4月1日以降、国外に居住する長期滞在外国人が行う相続・贈与においては、国外財産を相続税・贈与税の課税対象から除く改正が行われました。ただし、出国後に贈与を行い、出国後2年以内に再び国内に住所を移した場合に関してはこの適用がありません。

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