法務: 「職場におけるハラスメント」

Newsletter (2018年8月) │ 法務

米国では、#MeTooの動きが急激に広がり、ソーシャルメディアのおかげでセクシュアルハラスメントに関する認識が高まりました。日本でも#MeTooの動きは広がりを見せ、政治家や官僚がセクハラ行為の疑いで耳目を集め、マスコミ報道も増えました。また、日本政府は、安倍首相の2017年「働き方改革実行計画」の一環として、職場におけるパワーハラスメント対策を検討すべき問題であるとし、2018年3月30日には厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書が取りまとめられ、労働政策審議会でさらなる議論が行われることとされました。ハラスメントの問題は古くて新しい問題ともいえ、本ニュースレターでは、ハラスメントの定義と企業がとるべき対応策について取り上げます。

職場におけるハラスメントは、複数の形態が考えられますが、日本において昨今特に紛争になるケースが多いのは、①パワーハラスメント、②セクシュアルハラスメント、③マタニティハラスメントの3つです。

パワーハラスメントは、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(平成24年3月15日)によれば、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいいます。具体的には、①暴行・傷害(身体的な攻撃)、②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)、③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)、④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大要求)、⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)、⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)の6つの類型が示されています。「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書においても、こうした円卓会議での概念をもとに具体的な事案の検討が行われています。

セクシュアルハラスメントについては、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和四十七年法律第百十三号。その後の改正を含む)(「雇用機会均等法」)第11条に定めがあり、事業主は、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされています。当該講じるべき必要な措置については、厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号。その後の改正を含む)(「セクハラ指針」)により示されています。セクシュアルハラスメントには2つの異なる類型があります。まず1つめは、「対価型セクシャルハラスメント」で、これは、従業員の意に反する性的な言動に対する労働者の対応に不利益が関連づけられているもので、従業員がその上司との性的関係を拒否したために解雇される場合等があります。2つめは「環境型セクシュアルハラスメント」で、職場において行われる従業員の意に反する性的な言動により職場環境が不快なものとなり、従業員の能力の発揮に大きな悪影響が生じることで、例えば職場にヌードポスターが貼ってあって従業員が自らの業務に集中できない、といった例があります。

マタニティハラスメントについては、雇用機会均等法弟11条の2に定めがあり、「職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされています。当該講じるべき必要な措置については、厚生労働省の「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号。その後の改正を含む)(「マタハラ指針」)により示されています。なお、労働基準法(昭和22年法律第49号、その後の改正を含む)および育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号、その後の改正を含む)(「育児・介護休業法」)により、企業は、妊娠している従業員に対し、一定期間の休暇(出産予定日の6週間前からおよび出産日翌日から8週間の産前・産後休暇および育児休業)を与えることとされています。

職場におけるハラスメントの企業に与える影響は大きく、従業員は、職場におけるハラスメントにより、身体的・精神的苦痛を受け、企業の生産性やモラルの低下、さらには従業員の離職等の問題も生じます。ハラスメントにより従業員との間に訴訟・紛争が生じれば、企業はレピュテーションリスクにさらされ、従業員のメンタルヘルスにつながるようなハラスメントについては労働基準監督署等による調査の対象となったり、警告を受ける可能性もあります。

では、職場におけるハラスメントを防止し、これに対応するために、企業は何をすればよいのでしょうか。厚生労働省では、7つのメニューを記載した「パワーハラスメント対策導入マニュアル」やセクハラ指針・マタハラ指針等で企業が講じるべき措置を公表しており、参考になります。

まず、第一歩として、経営陣が社内ではいかなるハラスメントも許容されないと明言する強いメッセージを発するべきです。次に企業の就業規則、ハラスメント防止規程等の社内ルールの見直しを行い、労使協定を締結する等、ハラスメントの防止のために当該ルールを決定し、必要に応じて強化するべきです。社内ルールは速やかに公表し、メールやイントラネット等で周知し、また、従業員向けのトレーニング等の開催を通じて実行していくべきと考えられます。

また、企業は、全従業員向けの匿名のアンケートを定期的に実施すること等を通じて自社のハラスメントの実態を把握するとともに、新入社員に対して就業規則やハラスメントに関する社内ポリシーについての研修を行い、在職の役員や従業員に対しても定期的な研修を行うべきです。研修は、パートタイム従業員への研修や、役員・管理職向けに特化した特別研修も含めて、全社的に行うべきです。ハラスメントの事案にはパートタイム従業員が被害者となる件数も多いのが実態です。これは、従業員の中には、パートタイム従業員が正規従業員と同等の権利を有し、同様にハラスメントから保護されるべきとの認識が低い場合があることに起因しています。研修は、人事部等の社内組織または外部のアドバイザー(弁護士や産業カウンセラー等の専門家)により継続して行われることが効果的です。

上記に加え、社内外にハラスメントに関する相談窓口を設けることも重要な方策のひとつです。従業員に対しては、ハラスメントを受けまたはハラスメントを目撃したときの相談窓口が周知されます。企業は、外部相談窓口として、外部の法律事務所やアドバイザーに窓口を設置する場合もあります。従業員が相談しやすい相談窓口を設置することが重要です。企業が相談窓口を設置しないと、ハラスメントを受けた従業員は、行政機関や外部の弁護士に相談することを迫られますが、企業としてはできるだけ早期に相談を受けるほうが対策を講じやすく好ましい手段であると考えられます。

政府、従業員およびメディアによるハラスメント問題への関心が高まる中、企業もハラスメント問題に対し無関心ではいられず、職場における様々な態様のハラスメントを防止し、これに取り組むための積極的な対策を講じていく必要があります。

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ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所では、社内規則等に関するアドバイス、ハラスメント研修、ハラスメント調査、外部相談窓口、当局・紛争訴訟対応等のハラスメントに関連する法務アドバイスを日常的に提供しています。

 

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