法務:「改正薬機法(医薬品医療機器等法) -製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドラインの公表」10月13日更新版

法務:「改正薬機法(医薬品医療機器等法) -製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドラインの公表」10月13日更新版

Newsletter (2020年10月) │ 法務

法令遵守体制関連を含む改正省令(改正薬機法施行規則)等の公布についてはこちら

8月17日版の英語版はこちらをご覧ください。

 

I. はじめに

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(2019年12月4日公布。以下「改正薬機法」)では、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売、製造、販売等を行う許可等業者(以下「許可等業者」)の、薬事に関する法令遵守体制等に関する規制が整備されました。このうち、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売業者・製造業者の法令遵守について、2020年8月11日付で「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン(案)」が公表され、2020年9月9日までパブリックコメントの手続きに付されました[1]。2020年09月29日付で当該パブリックコメントの結果(以下「パブコメ回答」)が公示され[2]、修正後のガイドライン(以下「ガイドライン」)が公表されています[3]

ガイドライン案は、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売、製造を行う企業にとって、改正薬機法で求められる法令遵守体制等の整備に向けて重要な指針になると考えられます。このニュースレターでは、当該ガイドラインの内容についてQ&Aの形式でお届けいたします。なお、改正薬機法の概要については、当所ニュースレター:「2019年薬機法(医薬品医療機器等法)等改正案と企業に与える影響[4]をご参照ください。

 

II. ガイドラインの内容

Q1 ガイドラインの策定・適用時期はいつ頃が予定されていますか。

ガイドラインの策定時期は、現時点では、2021年1月が予定されています[5]

なお、改正薬機法の薬事に関する法令遵守体制等に関する規制は、2021年8月1日から施行されるため、ガイドラインの適用も同日から適用されます(パブコメ回答60)。

 

Q2 ガイドラインの構成を教えてください。

ガイドラインでは、本文で医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関する指針が記載されているほか、別添1に、近年発生している許可等業者による薬機法違反事例が、別添2に「本改正により整備された製造販売業者等の法令遵守体制等に関する規定」として改正薬機法の関連条文の抜粋が掲載されています。

<ガイドラインの構成>

第1        基本的考え方

 1.     許可等業者の責務

 2.     法令違反の発生と法令遵守に向けた課題

 3.     薬機法が求める法令遵守体制

第2        製造販売業者等の法令遵守体制

 1.     法令遵守体制の整備についての考え方

 2.     製造販売業者等の業務の適正を確保するための体制の整備

  (1). 製造販売業者等の業務の遂行が法令に適合することを確保するための体制

   ①     役職員が遵守すべき規範の策定

   ②     役職員に対する教育訓練及び評価

   ③     業務記録の作成、管理及び保存

  (2). 役職員の業務の監督に係る体制

  (3). その他の体制

 3.     総括製造販売責任者等が有する権限を明らかにすること

 4.     GQP省令等を遵守するための措置

  (1). 総括製造販売責任者等に対する必要な権限の付与

  (2). 総括製造販売責任者等の業務の監督

 5.     その他の製造販売業者等の業務の適正な遂行に必要な措置

第3        薬事に関する業務に責任を有する役員

 1.     責任役員の意義

 2.     責任役員の範囲

第4        総括製造販売責任者等

 1.     総括製造販売責任者等の選任

 2.     総括製造販売責任者等による意見申述義務

 3.     製造販売業者等による総括製造販売責任者等の意見尊重及び措置義務

別添1 法令違反事例

別添2 本改正により整備された製造販売業者等の法令遵守体制等に関する規定

 

Q3 ガイドラインの対象となる企業はどのような企業ですか。

ガイドラインの対象となる企業は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(ガイドラインでは「医薬品等」と総称)の製造販売業者及び製造業者(ガイドラインでは「製造販売業者等」と総称)です。改正薬機法では、薬局開設者、店舗販売業者、配置販売業者、卸売販売業者、採血事業者、高度管理医療機器等の販売業者・貸与業者、修理業者についても薬事に関する法令遵守体制等の整備が義務付けられましたが、このガイドラインはこれらの許可等業者を対象としていません。

 

<ガイドラインの対象となる許可等業者>

①下記製品のいずれかの、②下記許可のいずれかを有する企業がガイドラインの対象となります。

①製品
医薬品
医薬部外品
化粧品
医療機器
再生医療等製品

 

②許可等の種類
製造販売業
製造業

なお、選任製造販売業者はガイドラインの対象となりますが、外国特例承認取得者又は外国製造業者はガイドラインの対象となりません(パブコメ回答4)。

 

Q4 ガイドラインの対象となる業務はどのような業務ですか。

ガイドラインの対象となる業務は、①製造販売業者による医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売又は②製造業者による医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造、に関する業務であり、それ以外の業務はガイドラインの対象となりません。例えば、製造業者の行う輸出用の医薬品等の製造に関する業務についてはガイドラインの対象となります。他方、製造販売業者製造販売業者が行う外国製造業者の認定に関する手続きの代行や、原薬等国内管理人としての業務は、通常、製造販売業者の製造販売に関する業務ではなく、ガイドラインの対象外とされています(パブコメ回答15、16)。

 

Q5 法令遵守体制を構築するための取組みは、業態や規模に応じて異なりますか。

ガイドラインでは、法令遵守体制を構築するための具体的な取組みについては、製造販売業者・製造業者の①業態や②規模に応じて実施することが想定されています。そのため、ガイドラインを参照しつつ、自社の業態や規模に応じた取組みを検討する必要があります。
なお、法令遵守体制について、「このような体制を構築すれば十分である」というテンプレートは存在せず、製造販売業者・製造業者が、①業務内容、②事業規模、③役職員の状況、④社内組織の状況等の様々な個別の事情により異なる法令違反リスクを評価し、違反が生じないためにどのような対策を行うべきかを検討し、不断の改善を行うべきとされています(パブコメ回答10)。

 

Q6 ガイドラインが作成された背景は何ですか。

改正薬機法では、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売、製造、販売等を行う許可等業者の、薬事に関する法令遵守体制等についての規制が整備されました。

ガイドラインは、許可等業者のうち、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売業者・製造業者が、薬機法で求められる法令遵守体制を構築するための取組みを検討し、実施するに当たっての指針を示すために作成されました。

 

Q7 今後公布される政省令とガイドラインの関係について教えてください。

今後公布される政省令には、ガイドラインで医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売業者・製造業者が遵守しなければならない事項として示された内容(具体的には、「・・・なければならない」、「・・・必要がある」、「・・・求められる」と記載されている内容)が定められる予定です。改正薬機法に定められた事項及び改正薬機法に基づく政省令に今後定められる予定の事項の解釈を示したものが、今回のガイドラインです(パブコメ回答1、2参照)。

 

Q8 ガイドラインと三役留意事項通知との関係について教えてください。

ガイドラインと「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について」(平成 29 年 6 月26 日薬生発 0626 第 3 号)(以下「三役留意事項通知」)は相互に補完する関係にあります。医薬品の製造販売業者が、薬事に関する法令の規定を遵守して医薬品の品質管理及び製造販売後安全管理に係る業務を適切に実施するためにどのような社内体制を構築すべきかを検討するに当たっては、ガイドラインと三役留意事項通知の両方に留意する必要があります(パブコメ回答6)。

 

Q9 ガイドラインと販売情報提供活動ガイドラインとの関係について教えてください。

ガイドラインでは、製造販売業者が、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品に関する適正な情報提供が行われるための措置を講じる必要があることが示されています。そのガイドラインで求められる措置として、医療用医薬品の製造販売業者は、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて」(平成 30 年 9 月 25 日薬生発 0925 第 1 号)(以下「販売情報提供活動ガイドライン」)に基づく社内体制の構築等を行うことが想定されています。
また、医療用医薬品の製造販売業者以外の製造販売業者(OTC医薬品、医療機器、再生医療等製品、医薬部外品、化粧品の製造業者)が、適正な情報提供が行われるための措置を検討するに当たって、販売情報提供活動ガイドラインを参考にしてもよいとされています(パブコメ回答36参照)。

 

Q10 製造販売業者・製造業者が遵守すべき「薬事に関する法令」とは何ですか。

製造販売業者・製造業者が遵守すべき「薬事に関する法令」とは、ガイドラインにおいて、薬機法、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法並びに薬機法第5条第3号ニに規定する「薬事に関する法令」であることが規定されており、具体的には以下の法令を指します(本ニュースレター執筆時点)。

 

薬事に関する法令

薬機法

麻薬及び向精神薬取締法

毒物及び劇物取締法

大麻取締法

覚醒剤取締法

あへん法

安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律

薬剤師法

有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

独立行政法人医薬品医療機器総合機構法

遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律

再生医療等の安全性の確保等に関する法律

臨床研究法

 

Q11 法令遵守体制について、不正の未然防止の観点で、規制当局主導によるモニタリング等の措置を整備していくことが予定されているのでしょうか。

製造販売業者・製造業者による法令遵守について特段の懸念がない場合に、製造販売業者・製造業者の法令遵守体制の十分性の確認だけを目的として、行政機関の調査が行われることは想定されていません(パブコメ回答39)。また、改正薬機法の法令遵守体制の整備義務は、製造販売業・製造業の許可要件や製造販売承認等の要件ではないため、業許可時、業許可更新時、GMP調査、QMS調査に、ガイドラインに示す法令遵守体制の構築に関する措置が十分かを確かめる目的での調査は行われません(パブコメ回答14)。
ただし、ガイドラインに示す法令遵守体制の構築に関する措置が十分かについては、薬機法第69条に基づく立入調査等の対象となり得ます(パブコメ回答14)。

 

Q12 法令遵守体制の構築に関する措置が不十分な場合、どのようなペナルティがありますか。

改正薬機法では、法令遵守体制の規定違反に対する罰則規定は設けられていませんが、ガイドラインでは、「法令遵守体制の構築に関する措置が不十分であると認められる場合は、改善命令(法72条の2の2)の対象となる」と定められています。改善命令の対象となれば、当局への対応に加え、レピュテーションに与える影響も大きいと考えられることから、「法令遵守体制の構築に関する措置が不十分」と当局からみられないよう対応していくことが求められます。なお、「法令遵守体制の構築に関する措置が十分かどうか」は、製造販売業者・製造業者の①業務内容、②事業規模、③法令等の違反が生じるリスク等の個別具体的な事情により評価が異なるとされ(パブコメ回答38)、一律の基準は示されていません。

 

Q13 製造販売業者・製造業者の業務の遂行が法令に適合することを確保するための体制としてどのようなことが求められますか。

ガイドラインでは、①役職員が遵守すべき規範の策定、②役職員に対する教育訓練及び評価、③業務記録の作成、管理及び保存の3つの項目について記載がされていますので、それぞれについてみていきます。

①役職員が遵守すべき規範の策定

ガイドラインでは、製造販売業者・製造業者の業務が法令を遵守して適正に行われるためには、製造販売業者・製造業者の役職員が遵守すべき規範を、社内規程において明確に定める必要があるとされ、以下のとおり社内規程で定めるべき事項が示されています。既存の社内規程に不十分な点がある場合には、新たな社内規程の作成や既存の社内規程の改定等を行う必要があります。なお、社内規程とは、社内において、役職員が業務を行う上で遵守しなければならないものとされている全ての規範を指し、GQP 省令等に基づき作成する業務手順書等も含まれます(パブコメ回答17)。

<社内規程で定めるべき事項>

社内規程で定めるべき事項明確にすべき事項(例)
適正に業務を遂行するための意思決定の仕組み

・ 意思決定を行う権限を有する者

・上記権限の範囲

・意思決定に必要な判断基準

・意思決定に至る社内手続等

意思決定に従い各役職員が適正に業務を遂行するための仕組み

・指揮命令権限を有する者

・上記権限の範囲

・指揮命令の方法

・業務の手順等

 

これらの意思決定や業務遂行の仕組みについては、業務の監督の結果や法令の改正等に応じて、随時見直しが行われなければならないとされています。

 

➁役職員に対する教育訓練及び評価

ガイドラインでは、役職員が法令を遵守して業務を行うことを確保するため、法令等や社内規程の内容を役職員に周知し、遵守を徹底する必要があるとされています。具体的には、以下の点を確認することが例示されています。

  • 計画的・継続的に行われる研修を役職員が受講しているか:役職員が法令等及び社内規程の内容を理解し、これを遵守して業務を行うためには、研修等の教育訓練を十分行うことが重要(パブコメ回答18)。
  • 業務の監督の結果や法令の改正等を踏まえて行われる研修を役職員が受講しているか
  • 法令等や社内規程の内容や適用等について役職員が相談できる部署・窓口を設置しているか:相談部署・窓口を設置する場合は、各製造販売業者・製造業者の業務内容、規模等を踏まえ、役職員が相談しやすく、適切な相談対応ができる部署・窓口となるよう、社内の組織上の位置付け等を検討することが重要(パブコメ回答18)。
  • 役職員が法令を遵守して業務を行うことを動機づけるため、役職員による法令等及び社内規程の理解やその遵守状況を製造販売業者・製造業者として確認し評価しているか

 

➂業務記録の作成、管理及び保存

ガイドラインでは、役職員による意思決定や業務遂行の内容が社内において適切に報告され、また、意思決定及び業務遂行が適正に行われたかどうかを事後的に確認することができるように、その内容が適時かつ正確に記録される体制とする必要があるとされています。具体的には、以下の点が必要です。

  • 業務記録の作成、管理及び保存の方法等の文書管理に関する社内規程を定めること
  • 上記社内規程が適切に運用されていること

また、事後的に記録の改変等ができないシステムとする等、適切な情報セキュリティ対策が行うことも重要とされています。

 

業務記録の意義については以下のとおり説明されています。

  • 製造販売業者・製造業者として、役職員が行った意思決定及び業務遂行の状況を把握し、適切に管理するために、極めて重要な社内資料(パブコメ回答19)。
  • 役職員が、教育訓練を通じて周知徹底された法令等及び社内規程を遵守して業務を行っているかどうかを、製造販売業者・製造業者としてモニタリングするためには、役職員が行った意思決定及び業務遂行の内容が適時かつ適切に記録されていることが重要(パブコメ回答20)
  • 業務記録が適時かつ適切に作成されていれば、法令等の違反や違反のおそれがある場合に、製造販売業者・製造業者において、速やかな事実関係の調査を行うことが可能となるため、違反行為の是正、原因分析、再発防止等の必要な措置を講じるに当たって、有効な社内資料として機能する(パブコメ回答20)

業務記録の範囲・情報の粒度(どのような業務について、どの程度詳細な業務記録を作成すべきか)及び保存期間については、上記の業務記録の意義にも鑑み、対象となる業務の重要性や、法令等の違反が生じるリスクに応じて、各製造販売業者・製造業者において検討し、文書管理に関する社内規程を定める必要があるとされ、一律の基準は示されていません(なお、法令により保存期間が定められている文書の保存期間については、当該法令に従う必要があります)(パブコメ回答20)。また、業務記録の文書管理の方法として、適時かつ正確な業務記録の作成、管理及び保存を行う観点から、各製造販売業者・製造業者において、適切な文書管理の方法を検討することが重要とされ、電子的な方法による文書管理についても否定はされていません(パブコメ回答21)。

 

Q14 製造販売業者・製造業者の法令遵守体制として、既存の社内機能やプロセスを活用することは認められますか。

はい。必ずしも、新たな社内規程を作成することや、新たな業務の監督に係る体制を構築すること等は求められません。製造販売業者・製造業者において、薬事に関する法令だけでなく、会社法その他の法令等を踏まえ、既に構築している体制を活用することも認められます。薬事に関する法令を遵守して業務を行うことを確保するために、既に構築している体制で十分かどうかを、製造販売業者・製造業者や責任役員が不断に検討し、不十分な点がある場合には、新たな体制の構築や既存の体制の改善等の措置を講じることが重要です(パブコメ回答12、13)。

 

Q15 製造販売業者・製造業者の役職員の業務の監督に係る体制としてどのようなことが求められますか。

ガイドラインによれば、製造販売業者・製造業者の業務の適正を確保するためには、役職員が法令等及び社内規程を遵守して意思決定及び業務遂行を行っているかどうかを確認し、必要に応じて改善措置を講じるための監督に関する体制が確立し、機能する必要があるとされています。そのためには、責任役員が、役職員による意思決定や業務遂行の状況を適切に把握し、適時に必要な改善措置を講じることが求められるため、役職員の業務をモニタリングする体制の構築や、役職員の業務の状況について責任役員に対して必要な報告が行われることが重要とされています。
なお、「役職員の業務をモニタリングする体制の構築」については、従業員だけでなく責任役員の業務も監督しなければならないことが示されています(改正薬機法第 18 条の2第1項第2号、同条第3項第2号、法第 23 条の2の 15 の2第1項2号、同条第3項第2号、パブコメ回答22)。責任役員は、製造販売業者・製造業者の法令遵守の徹底に向けて主導的な役割を果たしますが、責任役員による意思決定や業務遂行が法令等及び社内規程を遵守して行われることを確保するためには、責任役員に対しても監視やモニタリングを行う仕組みが機能していることが重要です。責任役員の業務に対する監視やモニタリングは、①取締役会及び他の取締役による監督のほか、②監査役による監査等(製造販売業者等が株式会社の場合)を含めた、実効的な責任役員の業務の監督に関する体制についての検討が必要です(パブコメ回答22)。

このような体制として具体的には以下の例示がされています。

  • 業務を行う部門から独立した内部監査部門により、法令遵守上のリスクを勘案して策定した内部監査計画に基づく内部監査を行い、法令遵守上の問題点について責任役員への報告を行う体制
  • 内部通報の手続や通報者の保護等を明確にした実効性のある内部通報制度が構築すること

また、以下の点が重要とされています。

  • 監査役等による情報収集等が十分に行われる体制であり、監査の実効性を確保すること
  • 製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する法令遵守上の問題点を最も実効的に知り得る者である総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者(ガイドラインでは「総括製造販売責任者等」と総称)による業務の監督及び意見申述が適切に行われる体制とすること

 

Q16 Q15の「業務を行う部門から独立した内部監査部門」について、①事業規模が小さく、独立した内部監査部門を設けるのは困難な場合はどうすればよいでしょうか。また、②業態や規模に応じて、内部監査部門による内部監査ではなく、役職員による自己点検の結果を責任役員に報告することでよいでしょうか。③多国籍企業の場合、海外にしか内部監査部門がない場合もありますが、日本の法令や制度を理解し、それに基づいて監査する限りは、海外の内部監査部門による内部監査を行うことでも問題ないでしょうか。

①ガイドラインでは、製造販売業者・製造業者の監督体制の例として、独立した内部監査部門による内部監査の実施を挙げています。役職員の業務の監督に係る体制としてどのような体制を構築する必要があるかについては、各製造販売業者・製造業者において、事業規模、業務内容、法令等の違反が生じるリスク等を踏まえ、実効的な監督体制のあり方を検討する必要があります。
②製造販売業者等の製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する業務については、GQP 省令等に基づき、自己点検を行うことが求められているため、自己点検の結果を活用することも含めて、監督体制のあり方を検討する必要があります。
③はい。グループ会社(外国企業を含む)における内部監査機能を活用することにより、実効的な内部監査が可能であると製造販売業者・製造業者として判断できる場合に、当該機能を活用することは、許容されています(パブコメ回答23~25)。

 

Q17 「製造販売業者等の業務の適正を確保するための体制」について、グループ会社間で役割分担している場合にグループ会社の機能を活用することは認められますか。

はい。例えば、製造販売業許可を保持する A 社、製品の表示、広告内容の原案作成を担う B 社、広告表現の適法性を評価する薬事規制部門のある C 社、法務部は D 社と、機能によってグループ会社間で役割分担をしている場合など、グループ会社において法令遵守体制に係る機能を分担している場合には、当該各機能を活用することを含めて、製造販売業者として法令を遵守できる体制が構築されていればよく、製造販売業許可を受けている法人のみで必要な全ての機能を有する必要はありません(パブコメ回答26)。

 

Q18 Q15の「役職員が法令等及び社内規程を遵守して意思決定及び業務遂行を行っているかどうかを確認し」について、確認する事項のうち、手順書等の改訂や逸脱事項の処理、製造及び品質管理の記録などに関しては、原則として、薬事に関する法律及び製造販売承認事項に抵触するものについては責任役員まで報告・確認を要するが、それ以外の改訂や、正常に製造された場合の製造記録、品質管理記録については全て報告・確認する必要はないと考えてよいでしょうか。

はい、一般的には、正常に製造された場合の製造記録や品質管理記録を、責任役員が全て確認する必要はありません(パブコメ回答27)。責任役員が、法令遵守の観点から役職員による業務の状況を確認する必要があるのは、法令違反又はそのおそれがある場合に製造販売業者等として行うべき措置を検討することや、より実効的な法令遵守体制の構築及び運用について検討することが求められるためです。そうした観点から、責任役員への報告・責任役員の確認の範囲を検討する必要があります(パブコメ回答27参照)。

 

Q19 製造販売業者・製造業者の業務の適正を確保するための体制の整備のうち、上記の他の体制としてはどのようなことが求められますか。

その他の体制として、ガイドラインでは、以下の体制が推奨されます。

  • 製造販売業者・製造業者全体としての法令等の遵守(コンプライアンス)を担当する役員(コンプライアンス担当役員)を指名すること:法令等の遵守(コンプライアンス)を担当する役員を置くことは、製造販売業者・製造業者が、各部門や部署の担当分野に捉われない全社的な法令遵守のための取組みを積極的に行うことや、製造販売業者・製造業者として法令遵守を重視する姿勢を役職員に示す等の観点から、効果的(パブコメ回答29)。なお、製造販売業者・製造業者がコンプライアンス担当役員を置く場合、担当範囲に、薬事に関する法令の遵守に係る事項が含まれるときは、当該コンプライアンス担当役員は、薬機法上、責任役員に位置付けられます(パブコメ回答29)。コンプライアンス担当役員の管掌範囲は通常法令遵守一般であり薬事に関する法令を除外していないと考えられることから、コンプライアンス担当役員に対し、改正薬機法の責任役員としての職責を負う者と位置づけられる点(又は位置付けない場合にはその整理)についてのインプットが必要と考えられます。
  • 製造販売業者・製造業者の部署ごとの特性を踏まえた法令遵守について中心的な役割を果たす者として、各部署にコンプライアンス担当者を置くこと:なお、コンプライアンス担当者を置く「各部署」は、品質保証部門や安全管理統括部門に限定されません(パブコメ回答29)。
  • 製造販売業者・製造業者の規模に応じ、法令遵守に関する全社的な取組みが必要と判断する場合は、コンプライアンス担当責任役員の指揮の下、法令遵守についての取組みを主導する担当部署としてのコンプライアンス統括部署を設置すること:
    • コンプライアンス統括部署を設置する場合の同部署と各部署のコンプライアンス担当者との役割分担の例:
      • コンプライアンス統括部署:全社的な法令遵守のための取組みを行う。全社で統一的に対応すべき事項についてはコンプライアンス統括部署が行う。
      • 各部署のコンプライアンス担当者:担当部署において、業務の特殊性や専門性を踏まえた法令遵守のための取組みを行う。各部署に特有の事項については各部署のコンプライアンス担当者が主導して取組みを行う(パブコメ回答30)。
  • 製造販売業者・製造業者が社外取締役を選任している場合、以下の監督機能の活用
    • 社外取締役に製造販売業者の法令遵守体制についての理解を促すこと
    • 法令遵守に関する問題点について従業者や各部署から社外取締役に対する報告が行われる体制とすること

 

Q20 総括製造販売責任者等が有する権限の明確化のために求められることは何ですか。

総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者と役員のそれぞれが負うべき責務や相互の関係が明確でないために、法令遵守のための改善サイクルが機能しにくくなっているという課題に対応するため(パブコメ回答31、32)、改正薬機法では、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が有する権限を明らかにすることが求められます。
ガイドラインによれば、製造販売業者においては、具体的には、以下の例のような総括製造販売責任者が有する権限の範囲を社内で明確にし、その内容を社内において周知することが必要とされています。

  • 品質保証責任者・国内品質業務運営責任者及び安全管理責任者その他の製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する業務に従事する者に対する業務の指示及び業務の監督に関する権限
  • 医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売業者・製造業者の廃棄、回収、販売の停止、添付文書の改訂、医療関係者への情報の提供又は法令に基づく厚生労働大臣への報告その他の品質管理又は製造販売後安全管理に関する措置の決定及び実施に関する権限
  • 医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造販売業者・製造業者の製造管理及び品質管理の適正かつ円滑な実施を確保するために必要な製造業者に対する管理監督に関する権限
  • その他、総括製造販売責任者が製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関して有する権限

同様に、製造業者においても、製造管理者又は責任技術者が有する権限の範囲を明確にし、その内容を社内において周知することが必要とされています。
なお、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者について明らかにすべき権限の範囲は、一律の範囲は示されておらず、GQP 省令等において総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が行うものとされている事項をはじめとして、製造販売業者・製造業者の法令遵守の観点から総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が担うことが適切と考える事項は何かについて、上記の例を参考に、各製造販売業者・製造業者において検討すべきとされています(パブコメ回答31、32参照)。
また、周知の方法についても、一律の方法は示されておらず、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の業務が、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する業務に従事する者の理解の下で、円滑かつ実効的に行われるようにするという趣旨を踏まえ、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の権限の範囲が、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する業務に従事する者に明らかとなるように検討してくださいとされています(パブコメ回答31、32参照)。

 

Q21 GQP省令等を遵守するための措置として何が必要ですか。

改正薬機法では、製造販売業者・製造業者は、①品質管理及び製造販売後安全管理を行わせるために総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者に対する必要な権限の付与、②総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の業務の監督を行うことが求められます。
ガイドラインでは、①、②について以下のとおり説明されています。

①総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者に対する必要な権限の付与

GQP省令・GVP省令・QMS省令・GMP省令・GCTP省令(以下「GQP省令等」)においては、製造販売業者・製造業者が、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者その他の責任者等に行わせなければならない業務が規定されています。これらの業務が適正に行われるために、製造販売業者・製造業者は、具体的には、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者その他の責任者等が当該業務を行うために必要な権限を付与し、その権限の範囲を社内において明確にしなければなりません
また、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者その他の責任者等に付与された権限が不十分であることにより、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に支障が生じ、法令違反が発生することがないよう、各責任者等にいかなる権限を付与する必要があるかを検討することが重要です。

➁総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の業務の監督

製造販売業者・製造業者は、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の業務の監督のため、以下の対応が求められます

  • 総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者その他の責任者等が付与された権限を適切に行使し、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する業務を適正に行っているかどうかについて監督すること。
  • 上記につき、必要に応じて改善措置を講じること

なお、上記1点目の「総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者その他の責任者等」の範囲については、GQP 省令等において、総括製造販売責任者その他の責任者等が行わなければならない業務又は製造販売業者・製造業者がそれらの者に行わせなければならないものとされている業務についての責任者等と考えられ、それらの者が適切に行うことができるために必要な権限を付与する必要がある旨解説されています(パブコメ回答33参照)。

 

Q22 「その他の製造販売業者等の業務の適正な遂行に必要な措置」として何が求められますか。

改正薬機法では、上記に加え、その他の製造販売業者・製造業者の業務の適正な遂行に必要な措置を行うことが求められます。
製造販売業者・製造業者は、法令遵守のための指針を従業者に対して示すこと、責任役員の権限及び分掌する業務を明らかにすることに加え、構築した法令遵守体制を実効的に機能させるために必要な措置を講じなければなりません。すなわち、社内規程の作成、教育訓練、業務記録の作成、モニタリング等の措置が法令遵守体制として実効的に機能するためには、それぞれを独立して実施するだけではなく、製造販売業者・製造業者において、①社内規程の内容を教育訓練に反映し、②教育訓練を受けた役職員が社内規程を遵守して業務を行い、③作成された業務記録を活用したモニタリングを実施し、④モニタリングの結果等を踏まえて、社内規程の改定や更なる教育訓練につなげる、という改善のサイクルを機能させることが重要とされています(パブコメ回答37)。

 

<法令遵守体制を実効的に機能させるために必要な措置>
社内規程の整備 → 教育訓練 → 業務の遂行・業務記録の作成 → 業務記録を活用したモニタリング → モニタリング等を踏まえた社内規程の改訂・教育訓練

 

なお、改正薬機法の第 18 条の2第1 項第4号及び第 23 条の2の15 の2第1項第4号における「製造販売業者の業務の適正な遂行に必要なものとして厚生労働省令で定める措置」とは、ガイドラインの第2の5(1)~(3)の措置(本項目で説明)を指すことが明らかにされました(パブコメ回答34)。

ガイドラインでは、ガイドラインに記載されているような法令違反事例が再度発生することがないよう、製造販売業者においては、以下の措置を講じることが必要とされました。

  1. 承認書の内容と齟齬する医薬品等の製造販売が行われないための措置
    • 医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の製造方法、試験検査方法その他の医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の品質に影響を与えるおそれのある事項の変更に関する情報を収集し、承認又は認証の内容と製造等の実態に齟齬が生じている場合には、承認又は認証の内容に合わせた製造等とすること
    • 医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の変更についての承認又は認証を取得すること等の必要な措置を講じること。
  2. 副作用等報告が適正に行われるための措置
    • 安全管理情報の収集、検討及び報告等が GVP 省令に従い適切に行われるための以下の措置
      • 人員の確保
      • システムの整備等
      • 業務の監督
      • その他の必要な措置
  3. 医薬品等に関する適正な情報提供が行われるための措置
    • 医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品に関する情報提供が科学的及び客観的な根拠に基づく正確な情報により行われ、薬機法上の広告規制違反となる広告等が行われないことを確保するために必要な業務の監督
    • その他の措置

 

また、承認書の内容と齟齬する医薬品等の製造販売が行われないようにするためには、製造販売業者だけでなく、製造業者による取り組みが重要であるため、製造業者は、必要な情報を製造販売業者(医療機器又は体外診断用医薬品の製造業者の場合は、製造販売業者、外国製造医療機器等特例承認取得者又は外国指定高度管理医療機器製造等事業者)に対して連絡すること等の必要な措置を講じることが必要とされています(パブコメ回答35)。

 

Q23 責任役員の責務について教えてください。

改正薬機法では、「薬事に関する業務に責任を有する役員」が薬機法上の責任役員と位置付けられました。
責任役員は、製造販売業者・製造業者による薬事に関する法令の遵守のために主体的に行動する責務があり、これには前述の法令遵守体制の構築及び運用を行うことも含まれるとされています。
責任役員がその責務に反し、製造販売業者・製造業者が薬事に関する法令に違反した場合には、当該役員は法令違反について責任を負うとされています。例えば、株式会社の取締役は、会社に対する善管注意義務(会社法 330 条、民法 644 条)に基づき法令を遵守する義務を負います。取締役が法令違反をし、他の取締役に対する監視義務を怠り又は内部統制システムの構築を怠る等により会社に損害が生じた場合は、任務懈怠責任(会社法423 条)等の法的責任を負いうる立場にあります。このように、責任役員は、薬事に関する法令に違反した場合、個人として、対外的に責任を負いうる立場にあることから、ガイドラインでは責任役員がその責務に反し、製造販売業者・製造業者が薬事に関する法令に違反した場合には、当該役員は法令違反について責任を負うこととされています(パブコメ回答42)。
ただし、責任役員には、その分掌する業務の詳細を全て把握することが求められているのではなく、その分掌する業務が薬事に関する法令を遵守して適正に行われるような体制を構築し、運用することが求められています(パブコメ回答49)。
なお、「薬事に関する法令に関する業務」のうち、「医薬品の承認申請」は製造販売を行う前の段階であり、薬機法の別の項目で十分に申請者の責任について触れられていることや、その内容も高度化・専門化しており、開発担当取締役といえどもその詳細を完全に理解・管理することが困難なこともあるとのパブリックコメントに対し、医薬品の承認申請に関する業務について薬事に関する法令の違反があった場合に、内容が高度で専門的であるために業務の詳細を把握していないことは、責任役員が当該法令違反に関する責任を免れる理由とはならないと説明されており(パブコメ回答49)、注意が必要です。
製造業者の責任役員は、GMP 省令において製造業者が行わなければならないとされている事項が適正に行われるように、必要な体制を構築し、運用することが求められます。(パブコメ回答52)。

 

Q24 「責任役員」の範囲について教えてください。

ガイドラインでは、以下のものが責任役員の範囲として定められています。以下のとおり、会社を代表する役員は、当然に責任役員に該当します(パブコメ回答40)。

会社の種類責任役員の範囲

株式会社

(指名委員会等設置会社を除く)

・ 会社を代表する取締役、及び

・薬事に関する法令に関する業務*を担当する取締役

株式会社

(指名委員会等設置会社)

・代表執行役、及び

・薬事に関する法令に関する業務*を担当する執行役

持分会社

・会社を代表する社員、及び

・薬事に関する法令に関する業務*を担当する社員

その他の法人上記に準ずる者

*「薬事に関する法令に関する業務」とは、医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品の承認申請、製造販売、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理及び広告等、薬機法の規制対象となる事項に係る業務並びにその他の薬事に関する法令の規制対象となる事項に係る業務をいい、薬事に関する法令の遵守に係る業務が含まれます。いわゆる薬事業務に限定されず、広告等や薬機法以外の薬事に関する法令遵守に関係する業務も含まれる点に注意が必要です。

薬機法等に規定された業務に関わる役員は、すべてガイドラインでいう「責任役員」に該当します。すなわち、製造販売業者・製造業者において、各役員が分掌する業務の範囲を決定した結果、その分掌する業務の範囲に、薬事に関する法令に関する業務(薬事に関する法令を遵守して行わなければならない業務)を含む役員は、薬機法上の責任役員に該当します。製造販売業者において「責任役員」という者を選任や指名する必要はなく、各役員が分掌する業務の範囲を決定した結果として、責任役員に該当する者が決まります(パブコメ回答40)。また、ガイドラインでは、製造販売業者・製造業者の役員であっても、薬事に関する法令に関する業務を担当しない役員(その分掌範囲に薬事に関する法令に関する業務を含まない役員)は、薬機法上の責任役員には該当しないことが示されています。このような薬事に関する法令に関する業務に関係しない役員はガイドラインの対象ではないとされています(パブコメ回答11)。

 

Q25 執行役員は「責任役員」に含まれますか。

いわゆる執行役員は、薬機法上の責任役員には該当しないとされています。執行役員も責任役員に含めるべきという意見も多くあったところですが、責任役員として薬機法上に位置付けられる者の範囲を明確にするため、製造販売業者・製造業者に薬事に関する法令に違反する行為があった場合に、個人として対外的に任務懈怠責任(会社法423 条)等の法的責任(Q23参照)を負いうる立場にある者が、責任役員と定められています。もっとも、責任役員が、自らの責任及び管理の下で、いわゆる執行役員に、製造販売業者等の法令遵守を確保するための措置を行わせる体制とすることは否定されていません(パブコメ回答43)。

 

Q26 取締役の中に「薬事に関する法令に関する業務を担当する取締役」が存在しない場合、「責任役員」は誰になりますか。

代表取締役以外の取締役に、薬事に関する法令に関する業務を担当する取締役が存在しない場合は、代表取締役のみが責任役員となります。その場合、責任役員である代表取締役の責任及び管理の下で、例えば取締役以外から責任役員の業務を担う従業者を責任役員相当として任命する等して、従業者に、製造販売業者等の法令遵守を確保するための措置(法令遵守体制の構築及びその適切な運用等)を行わせる体制とすることも認められます(パブコメ回答44)。

 

Q27 製造販売業者と製造業者を同一法人が持つ場合、製造販売業者・製造業者両方を管理監督する責任役員を1名設置することは認められるのでしょうか。

当該責任役員が、製造販売・製造に関する業務のうち、それぞれの薬事に関する法令に関する業務を担当するのであれば、製造販売業者・製造業者両方の責任役員に該当します。
同一法人が製造販売業許可及び製造業許可を受けている場合に、ある役員が、製造販売業者による製造販売に関する業務のうち、薬事に関する法令に関する業務を担当するのであれば、当該役員は、当該製造販売業者の責任役員に該当します。また、当該役員が、製造業者による製造に関する業務のうち、薬事に関する法令に関する業務についても担当するのであれば、当該役員は、当該製造業者の責任役員にも該当します(パブコメ回答45)。

 

Q28 責任役員に人数の制限はありますか。

責任役員に人数の制限はありません。責任役員の人数は、製造販売業者・製造業者において各役員が分掌する業務の範囲をどのように定めるかにより決まります(パブコメ回答46、47。Q24参照)。

 

Q29 責任役員に資格要件はありますか。

責任役員の欠格事由(改正薬機法第5条第3号に定める欠格事由が、製造販売業者・製造業者の許可について準用されています。)に該当しなければ、責任役員の資格要件(薬剤師、品質保証や薬事等の業務経験など)は特に定められていません(パブコメ回答48)。なお、欠格事由には、①禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者、②薬事に関する法令又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者、③麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者、④精神の機能の障害により製造販売業者・製造業者の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者、⑤製造販売業者・製造業者の業務を適切に行うことができる知識及び経験を有すると認められない者があります。

 

Q30 海外在住の役員も責任役員になりますか。

海外在住の者であっても、会社を代表する役員又は薬事に関する法令に関する業務を担当する役員は、責任役員に該当します(パブコメ回答50)。

 

Q31 責任役員と総括製造販売責任者の兼務は可能ですか。

はい、総括製造販売責任者が取締役である場合は、薬事に関する法令である薬機法、GQP 省令及び GVP 省令に関する業務を担当する取締役であるため、当該総括製造販売責任者は責任役員に該当します(パブコメ回答51)。

 

Q32 改正薬機法の施行後直ちに、責任役員の氏名を記載した許可申請書の変更届出が必要でしょうか。

いいえ、責任役員の氏名の許可申請書への記載は、改正薬機法の法令遵守体制義務に関する部分の施行日(2021年8月1日)以降に、許可申請、許可の更新申請を行う場合又は許可申請に係る変更の届出(薬機法第 19 条、法第23 条の 2 の 16)を行う場合に、併せて行えばよいとされています。なお、改正薬機法の施行日(2021年8月1日)以降、製造販売業者・製造業者は、社内においては、誰が責任役員であるのかを明確にする必要があります(パブコメ回答61)。

 

Q33 現行法における「業務を行う役員」と改正薬機法の「責任役員」の範囲は異なりますか。

現行法の「業務を行う役員」の範囲は、「会社を代表すべき取締役及び薬事法の許可に係る業務を担当する取締役」(株式会社の場合)とされているのに対し、改正薬機法の責任役員の範囲は、「会社を代表する取締役及び薬事に関する法令に関する業務を担当する取締役」(株式会社の場合)とされている点で異なります。
「責任役員」は、製造販売業者・製造業者による「薬事に関する法令の遵守」に責任を有する者であるため、「薬機法の許可に係る業務を担当する」かどうかではなく、「薬事に関する法令に関する業務を担当する」かどうかにより、その該当性が判断されることになります(パブコメ回答41)。そのため、改正薬機法の施行にあわせた見直しの検討が必要になります。
なお、改正薬機法の施行により、「業務を行う役員」は廃止され、「薬事に関する業務に責任を有する役員」(責任役員)に改められます(パブコメ回答41)。

 

Q34 総括製造販売責任者等の選任について教えてください。

改正薬機法では、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者は、法令を遵守するために必要な能力及び経験を有する者でなければならないと定められました。
ガイドラインでは、具体的には以下の点を考慮して総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者を選任しなければならないことが規定されています。

  • 薬機法及びGQP省令等に基づき総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が遵守すべき事項及び総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者に行わせなければならないとされている事項を前提として、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者にどのような権限を付与する必要があるかを検討し、その権限の範囲を明確にした上で、当該権限に係る業務を行うことができる①知識、②経験、③理解力及び④判断力を有する者かどうかを客観的に判断しなければならないとされています。なお、「客観的な判断」にあたり、製造販売業者・製造業者が、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者を選任した理由を合理的に説明できるかがポイントとなります。例えば、社内において、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者を選任するに当たっての客観的な基準を定めている場合に、当該基準を満たす者であることは、合理的な説明になる(パブコメ回答54参照)ため、社内のこうした基準の確認と、当該基準に照らした選任を行っているかを確認することが必要と思われます。
  • 製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する各部門との密接な連携を図りながら、当該部門の責任者及び担当者に対する実効的な指示及び 監督を行うことができる指導力を有しているかどうか。
  • 責任役員に対して忌憚なく意見を述べることができる職務上の位置付けを有するかどうか。なお、「職務上の位置付け」について、具体的にどのような職位にあることが望ましいかは、各製造販売業者・製造業者の社内組織や人事上の事情等に応じて異なるとされ(パブコメ回答55)、一律の基準はガイドラインで示されていません。各製造販売業者・製造業者において、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が、製造販売業者・製造業者や責任役員に対して忌憚のない意見を述べることができる状況を確保できるよう検討すべきとされています(パブコメ回答55)。
選任の考慮要素

・知識

・経験

・理解力

・判断力

・指導力

・ 職務上の位置づけ

 

Q35 総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者による意見申述義務について教えてください。

改正薬機法では、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理を公正かつ適正に行うために必要があるときは、製造販売業者・製造業者に対し、意見を書面により述べる義務が規定されています。

これをうけて、ガイドラインによれば、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者には、以下のことが求められます。

  • 自ら主体的かつ積極的に法令遵守上の問題点の把握に努めること
  • 製造管理・品質管理・製造販売後安全管理について広く法令遵守上の問題点を把握できるよう、関係する部門並びにその責任者及び担当者と密接な連携を図ること
  • 意見申述は、意見の内容が製造販売業者・製造業者に明確に示されること
  • 意見申述があったことが記録されるよう、書面により行うこと

なお、緊急を要する事項についての報告が、書面ではなく一次的に口頭等で行われることについては許容されています。

 

Q36 総括製造販売責任者の意見申述について、直接製造販売業者(責任役員) に意見を申述するルートがない場合、上司を経由して意見を申述することでもよいでしょうか。

パブコメ回答では、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の書面申述義務は、製造販売業者・製造業者や責任役員に対し、直接意見を述べることを想定したものと説明されています。緊急を要する場合や、法令遵守の観点から重要性が高い場合等においても、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が製造販売業者・製造業者や責任役員に対して直接意見を述べる方法が一切存在しないことは、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の意見を尊重する体制として望ましくないとされています。
総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の意見が、直ちに、その内容が他の者によって変えられることなく、製造販売業者等に伝達されることが、製造販売業者等が製造管理・品質管理・製造販売後安全管理に関する法令遵守上の問題点を適切に把握するために重要であり、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の職責や社内の指揮命令系統等により、通常の業務において、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が製造販売業者・製造業者や責任役員に対して直接意見を述べることが困難な事情がある場合であっても、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の意見が、速やかに、その内容が他の者によって変えられることなく、製造販売業者・製造業者に伝達されるよう、意見を受け付ける方法や体制を明確にすることが必要となります(パブコメ回答57)。

 

Q37 総括製造販売責任者等の意見申述について、当該意見申述をする必要があるのは、法令遵守上の問題点を発見したときということでしょうか。

総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者は、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理を公正かつ適正に行うために必要があるときに、製造販売業者・製造業者に対し、意見を書面により述べなければなりません。すなわち、法令を遵守して業務を行うために必要があるときは、製造販売業者・製造業者に対して意見を述べることが求められます(パブコメ回答58)。以上より、法令違反を発見した場合にのみ意見申述を行えばよいという訳ではない点に注意が必要です。

 

Q38 製造販売業者・製造業者による総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の意見尊重及び措置義務について教えてください。

改正薬機法では、製造販売業者・製造業者は、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の意見を尊重し、法令遵守のために措置を講じる必要があるかどうかを検討しなければならず、措置を講じる必要がある場合は当該措置を講じなければならないこと、また、講じた措置の内容については記録した上で適切に保存しなければならず、総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者から意見が述べられたにもかかわらず措置を講じない場合は、措置を講じない旨及びその理由を記録した上で適切に保存しなければならないことが定められました。

ガイドラインでは、これをうけて、製造販売業者・製造業者が、以下の体制を明確にする必要があることが示されました。

  • 総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者の意見を尊重するための前提として、意見を受け付け、意見を踏まえて措置を講じる必要があるかどうかを検討する責任役員・会議体
  • 当該措置を講じる責任役員の明示
  • 総括製造販売責任者・製造管理者・責任技術者が意見を述べる方法
  • 製造販売業者・製造業者において必要な措置を講じる体制

 

5.まとめ

以上みてきたように、今回のガイドラインは改正薬機法の求める法令遵守体制について、パブコメの結果を踏まえたうえでより詳細かつ重要な指針となっていることから、上述したガイドラインの内容を精査し、自社の法令遵守体制に不足している点がないかの検証を始めることが有用と考えられます。多くの企業にとって、程度は異なるものの、組織変更や社内規程の整備・修正等の対応(又はその検討)が必要と考えられることから、ガイドラインの策定を見据えて、改正薬機法の施行に向けた社内チームの編成やマネジメントへのインプットを行っていくことが重要です。

また、今後制定される政省令についても引き続き議論の動向を注視し、対応していく必要があります。

(2020年8月17日(2020年10月13日更新))

 

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本書において提供する情報は、あくまで一般的な情報として提供されるものであり、具体的な専門的アドバイスを提供するものではありません。具体的な事案に関するご相談には個別に対応いたしますので改めて担当弁護士(根本鮎子))までお問い合わせください。

 

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