食品の用途発明に関する審査基準改定の概要

従来の審査基準においては、請求項中に用途限定がある食品の発明については、公知の食品の新たな属性を発見したとしても、通常、公知の食品と区別できるような用途を提供することはない、として、用途発明として認められていませんでした。このため、公知の食品の新たな属性を発見したとしても、特許保護を受けることができませんでした。
しかしながら、近年の健康志向の高まりや健康増進が望まれる背景から健康食品の市場規模は拡大しており、これに呼応して、食品の機能性に関する研究開発も進められています。このため、特許による保護を要望するユーザーニーズも高まっていました。また、食品分野における保護を認める制度を有する外国も存在します。
この様な状況の下、食品の用途発明に関して審査基準の点検が行われ、食品に関する技術分野における発明の保護及び利用等を図るため、審査基準の改訂が行われました。

 

A.食品の用途発明についての改訂審査基準の内容

食品の用途発明としての新規性を有すると判断した上で、他の分野と同様に、進歩性、記載要件等を判断する。

(1)食品に関する発明の請求項に用途限定がある場合には、用途限定が請求項に係る発明を特定するための意味を有するものとして認定する。

請求項中に、「~用」といった、物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)が付された物の発明を用途発明として解すべき場合の考え方:
用途発明とは、(i)ある物の未知の属性を発見し、(ii)この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明をいう。

(2)ただし、動物、植物については、用途限定が付されたとしても、そのような用途限定は、動物、植物の有用性を示しているにすぎないから、用途限定のない動物、植物そのものと解釈する。

(3)食品の用途発明の効果を立証する試験としては、他の技術分野と同様に、明細書の記載及び技術常識から、当業者がその用途に使用できると理解できる程度であればよい。

 

B.事例

例1

請求項1:成分Aを有効成分とする二日酔い防止用食品組成物。
引用発明:成分Aを含有する食品組成物。
上記の食品組成物が、「二日酔い防止用」という用途限定以外の点で相違しないとしても、審査官は、以下の(i)および(ii)の両方が満たされる場合には、「二日酔い防止用」という用途限定も含めて請求項に係る発明を認定する(両者は異なる発明と認定される=新規性あり)。
(i)「二日酔い防止用」という用途が、成分Aがアルコールの代謝を促進するという未知の属性を発見したことにより見いだされたものであるとき。
(ii)その属性により見いだされた用途が、「成分Aを含有する食品組成物」について従来知られている用途とは異なる新たなものであるとき。

 

例2

請求項1:成分Aを有効成分とする歯周病予防用食品組成物。
請求項2:成分Aを有効成分とする歯周病予防用グレープフルーツジュース。
請求項3:成分Aを有効成分とする歯周病予防用グレープフルーツ。

実施例: グレープフルーツから成分Aを単離し、抗菌効果を確認したことが記載されている。

引用文献:グレープフルーツから、血液中のLDLコレステロールを低下させる成分として成分Aが単離されたこと、成分Aを含有するサプリメント又はグレープフルーツを圧搾して製造した成分Aを含有するジュースの摂取により、LDLコレステロールの低下が見られたことが記載されている。

請求項1及び請求項2に係る発明は、歯周病予防用との用途限定の有無の点で相違するため、新規性を有する。引用文献中に、成分Aについて歯周病予防用を示唆する記載があるなどの動機付けがないなどの場合には、進歩性が認められる。
請求項3に係る発明において、歯周病予防との用途限定は、植物であるグレープフルーツの有用性を単に示しているに過ぎないため、請求項3に係る発明を用途限定のないグレープフルーツとして解釈する。そして、引用文献には、成分Aを含有するグレープフルーツが記載されている。従って、請求項3に係る発明は新規性を有しない。
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